• メリッサ(レモンバーム)
  • メリッサ(レモンバーム)

メリッサ(レモンバーム)

  • 学名
    Melissa officinalis
  • 科目
    シソ科
  • 主な産地
    ヨーロッパ、アジアなど

植物の特徴

メリッサ(レモンバーム)は、シソ科の多年草で、60cmほどまで育ちます。花はかわいらしい白い花が咲きます。冬には地上部は枯れ、土の中に残っている根から翌春新芽がでてきます。メリッサの由来は、ミツバチが好み、磁石のように引き寄せられることからギリシャ語で蜂を意味する「Melissa」から名付けられたといわれています。もともとは蜂が密を集めハチミツを得られるようにするために栽培されていましたが、今では、ハーブティなどの飲食用から香料、園芸用など広く使われています。

精油の構成成分

メリッサ
  • メリッサ

  • 全成分名称
    メリッサ葉油
  • INCI
    Melissa Officinalis Leaf Oil
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留
  • 採油率
    0.014%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    シトラス

メリッサ 精油の特徴

葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.014%前後で、得られた精油は淡黄色~淡緑黄色を帯びた色をしています。シトラール、β-カリオフィレン、ゲルマクレンDが主な成分で、香りはレモンに似た爽やかさと、ハチミツのような甘さをバランスよく持った清涼感のある香りです。深みのある甘さを感じつつも、重すぎない印象でバランスの良い爽快感を持っています。抽出される精油量は非常に少なく、高価な精油として知られています。多くの精油と好相性です。香りが強い精油のため、少量でも十分な存在感を発揮します。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Citral 39.9%
  • β-Caryophyllene 17.2%
  • Germacrene D 4.5%
  • Caryophyllene oxide 3.0%
  • Methyl heptenone 2.3%
  • Citronellal 1.8%
  • Geraniol 1.6%
  • δ-Cadinene 1.5%
  • Ocimene  1.4%
  • α-Humulene 1.4%
  • Geranyl acetate 1.4%
  • Linalool 1.2%
  • α-Copaene 1.0%
  • other components 6.2%

構成成分の効果・効能・作用

ゲラニオール

Geraniol

ゲラニオール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    106-24-1
  • 分類
    モノテルペンアルコール

ゲラニオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ヒト臍帯静脈内皮細胞へのゲラニオール添加により、Ox-LDLによるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

ゲラニオール添加培地において,ボツリヌス菌の生育阻害効果が報告されました。2)その他、複数の菌に対しても報告されています。3)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

肝癌発癌モデルに供されたラットにおいて、ゲラニオール投与群の肝アポトーシス(細胞死)指標が増加したことが報告されました.4)

  • 1)Ammar et al., Nutrients, 2022
  • 2)Ueda et al., Nippon Shokuhin Kogyo gakkaishi, 1982
  • 3)M˛aczka et al., Molecules, 2020
  • 4)Ong et al., Carcinogenesis, 2006

シトラール

Citral

シトラール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dienal
  • 分子式
    C10H16O
  • 分子量
    152.23 g/mol
  • CAS No.
    5392-40-5
  • 分類
    モノテルペン

シトラールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、シトラール投与群では脳内モノアミン量増加が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Acti-bacterial Effects)

コウジカビを培地で生育させ、シトラールを添加したところ他の精油成分と比較して高い抗菌活性を示し、また複数の真菌に対して活性の持続時間も長いことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

ヒトの乳癌由来3次元培養細胞にシトラールを与えると濃度依存的に細胞集合体が小さくなることが報告されました。さらにアポトーシス細胞を検出するために利用されるAnnexinV/7AADフローサイトメトリーを用いた実験において、シトラール供与によるアポトーシス細胞の増加が報告されました。3)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)岡村、木材保存、2002
  • 3)Nigjeh et al., BMC Complementary and Alternative Medicine, 2018

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペンアルコール

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

メリッサ:
皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

メリッサ

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

シトラール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

シトラール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Melissa oil (genuine Melissa officinalis L.), 2020.
International Fragrance Association, Citral, 2020.
協力
山本香料株式会社