• ゼラニウム(ニオイテンジクアオイ)
  • ゼラニウム(ニオイテンジクアオイ)

ゼラニウム(ニオイテンジクアオイ)

  • 学名
    Pelargonium graveolens
  • 科目
    フウロソウ科
  • 主な産地
    エジプト、フランス、モロッコ、中国など

植物の特徴

ゼラニウムは、フウロソウ科に属する多年草で、高さ約50cm程度です。花は薄いピンク色で、葉は春菊のような独特の形状をしており、分泌腺毛で表面を覆われています。この分泌腺毛から強く快いローズ様の香りが分泌され、ローズゼラニウムとも呼ばれています。ゼラニウムの呼び名の由来は、以前この植物がGeranium (ゲンノショウコ属)に分類されていたことが名残で残っています。非常に交配のしやすい種であることから約600もの多くの「種」が存在するといわれています。ゼラニウムは1820年頃に南フランスのグラース地方で香料を得るために栽培されたのが始まりといわれています。その後、インド洋レユニオン島にわたり、広く栽培されるようになりました。

精油の構成成分

ゼラニウム
  • ゼラニウム

  • 全成分名称
    ニオイテンジクアオイ油
  • INCI
    PELARGONIUM GRAVEOLENS OIL
  • 使用部位
    全草
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.15%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    フローラル

ゼラニウム 精油の特徴

全草から水蒸気蒸留で得られる精油は0.15%前後で、薄い黄色〜深く濃い黄色を帯びた色をしています。バラに多く含まれるゲラニオールやリラックス成分として知られるリナロール、シトロネロールが主な成分で、さわやかな甘さが特徴です。ゼラニウムはフゼアの香調に使われていましたが、現在は透明感のあるフローラルノートにも多用されます。バラのような濃厚で芳醇な甘さと、グリーン調の落ち着きを持った香りは、重たすぎず、優しく包み込んでくれるような印象を持ちます。女性にも人気の香りですが、グリーン調から男性にも多く好まれる香りです。香りが強いので、ブレンドの際は入れすぎないように注意しましょう。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Citronellol 34.1%
  • Geraniol 15.4%
  • Linalool 9.3%
  • Citronellyl formate 9.3%
  • iso-Menthone 5.6%
  • Geranyl formate 3.7%
  • Guaia-6,9-diene 1.5%
  • Geranyl iso-butyrate 1.0%
  • other components 20.2%

構成成分の効果・効能・作用

ゲラニオール

Geraniol

ゲラニオール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    106-24-1
  • 分類
    モノテルペンアルコール

ゲラニオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ヒト臍帯静脈内皮細胞へのゲラニオール添加により、Ox-LDLによるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

ゲラニオール添加培地において,ボツリヌス菌の生育阻害効果が報告されました。2)その他、複数の菌に対しても報告されています。3)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

肝癌発癌モデルに供されたラットにおいて、ゲラニオール投与群の肝アポトーシス(細胞死)指標が増加したことが報告されました.4)

  • 1)Ammar et al., Nutrients, 2022
  • 2)Ueda et al., Nippon Shokuhin Kogyo gakkaishi, 1982
  • 3)M˛aczka et al., Molecules, 2020
  • 4)Ong et al., Carcinogenesis, 2006

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペンアルコール

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

シトロネロール:
皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

シトロネロール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

ゲラニオール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

ゲラニオール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Geraniol, 2023.
International Fragrance Association, Citronellol, 2020.
International Fragrance Association, Linalool, 2004.
協力
山本香料株式会社