• サイプレス
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サイプレス

  • 学名
    Cupressus sempervirens
  • 科目
    ヒノキ科
  • 主な産地
    フランス、モロッコなど

植物の特徴

サイプレスは、ヒノキ科に属す常緑の高木で、高さ20~30mほどまで育ちます。学名である「Semperviens」の由来として、この木の寿命が50~60年以上に達することから、「永遠の命」を意味するSemperviensという種小名が与えられました。サイプレスは多くの国の伝承で、「あの世」の入り口とされていることから、ギリシャやローマでは寺院や教会、墓地などでよく見られます。また南米では防雨風林として植えられるなど、人々の暮らしに人々の暮らしに寄り添ってきた植物です。

精油の構成成分

サイプレプス
  • サイプレプス

  • 全成分名称
    イタリアイトスギ葉/実/茎油
  • INCI
    Cupressus Sempervirens Leaf/Nut/Stem Oil
  • 使用部位
    葉、果実、茎
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.5-1.2%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    ウッディ

サイプレプス 精油の特徴

葉や果実から水蒸気蒸留によって得られた精油は0.5%-1.2%前後で、無色~淡黄色を帯びた色をしています。α-ピネン、δ-カレン、リモネンなどが主な成分で、香りは爽快感のあるグリーンとほのかな酸味、優しいウッディ調の香りがあります。清々しく、深い森林にいるかのような心地よさを与え、心を軽くしてくれるような印象があります。グレープフルーツやレモンといった爽快感のある香りやサンダルウッド、フランキンセンス、ラベンダーなどの深みや甘さのある香りと相性が良いです。香りはそこまで強くない精油のため、ブレンドの際は少し多めからはじめてバランスをとっていくと良いでしょう。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • α-Pinene 48.6%
  • δ-3-Carene 24.7%
  • Terpinolene 2.8%
  • Limonene 2.8%
  • Myrcene 2.5%
  • Terpinyl acetate 1.9%
  • Terpinen-4-ol 1.4%
  • β-Pinene 1.1%
  • other components 14.3%

構成成分の効果・効能・作用

テルピネン-4-オール

Terpinen-4-ol

テルピネン-4-オール
  • IUPAC名
    4-Methyl-1-propan-2-ylcyclohex-3-en-1-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    562-74-3
  • 分類
    単環性モノテルペンアルコール

テルピネン-4-オールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects
Anti-inflammatory Effects
Vascular Smooth Muscle Relaxation

抗菌・抗バイオフィルム(Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects)

黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して、発育抑制および殺菌作用を有することが報告されました。さらに同報告においてバイオフィルム形成阻害及び除去作用を有することが報告されました。1)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、テルピネン-4-オール投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少が報告されました。マウス由来マクロファージ細胞RAW264.7において、炎症誘発性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-12の発現が抑制されたことが報告されました。2)

血管平滑筋緊張緩和(Vascular Smooth Muscle Relaxation)

摘出したラット胸部大動脈において、テルピネン-4-オール添加により緊張状態の血管平滑筋の弛緩を誘導することが報告されました。3)

  • 1) Laisa Cordeiro et al., International Journal of Molecular Sciences, 2020
  • 2) Zecai Zhang, et al., Frontiers in Immunology, 2017
  • 3) Rebeca Peres Moreno Maia-Joca et al., Life Sciences, 2014

ミルセン

Myrcene

ミルセン
  • IUPAC名
    7-methyl-3-methylideneocta-1,6-diene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    123-35-3
  • 分類
    モノテルペン

ミルセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-cancer Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞NHDFにおいて、UVB照射することで生成された活性酸素(ROS)レベルが、ミルセン共存下では濃度依存的に低減することが報告されました。1)
その他、ミルセンの抗酸化作用に関して複数報告されています。2) 3)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

ヒト軟骨細胞HCHにおいて、ミルセンは炎症誘発性サイトカインであるIL-1βによるNO産生を抑制することが報告されました。4)
炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、ミルセン投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少、結腸長さの回復が確認されました。ヒト大腸腺癌細胞HT-29において、TNF-α誘発によるCOX-2、CXCL-1、IL-8mRNA発現がミルセン添加により発現抑制されたことが報告されました。5)

抗癌(Anti-cancer Effects)

ヒト由来癌細胞Helaに対して、細胞毒性を有することが示されました。さらに細胞遊走、細胞増殖速度の抑制、細胞形態の変化への影響が報告されました。6)

  • 1) Hwang, E. et al., The American Journal of Chinese Medicine, 2017
  • 2) Ciftci O et al., Toxicology and Industrial Health, 2011
  • 3) Ciftci O et al., Neurochemical Research, 2014
  • 4) Rufino AT et al., European Journal of Pharmacology, 2015
  • 5) Almarzooqi S et al., molecules, 2022
  • 6) P Luca et al., molecules, 2023

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

α-ピネンの香りを吸入したマウスの脳腫瘍が小さくなった一方、α-ピネン添加によるメラノーマ細胞の増殖はみられなかったことから、心理的な影響が考えられることが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

α-ピネンは青変菌に対して、気体暴露および培地添加の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory)

RAW264.7細胞においてリポ多糖(LPS)添加により炎症を引き起こす物質である一酸化窒素(NO)の産生が誘導されますが、α-ピネン添加によりNO産生が抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2)岡村、木材保存、
  • 3)Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

IFRA規制

サイプレス:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社