• ローレル(月桂樹)
  • ローレル(月桂樹)

ローレル(月桂樹)

  • 学名
    Laurus nobilis
  • 科目
    クスノキ科
  • 主な産地
    トルコ、ギリシャ、イタリア、フランス、クロアチアなど

植物の特徴

ローレルは、クスノキ科で高さは、10m前後まで育ちます。葉は楕円形の緑の葉を一年中つけます。花は小さく黄色の花を群がって咲かせます。果実は、小さく成熟すると黒い色をしています。ローレルは、とても神聖化されている樹木で、アポロン神の木ともされました。ゆえに、古代ギリシャのオリンピック競技で勝利者には、ローレルの枝葉を使って、冠が贈られました。「ローレルの葉は、料理では、別名ローリエとも知られており、香辛料としてよくスパイスに使われています。「ローレル」という名前はケルト語で「緑」を意味する「laur」が語源となっているっとも言われ、特徴的で様々ば利用がされた葉が名前の由来にもなっています。原産地は、地中海沿岸、カナリヤ島ともいわれていますが、ハーブや、香辛料としての広がりとともに、トルコ、ギリシャ、イタリア、フランスなど、地中海沿岸を中心に栽培されるようになりました。

精油の構成成分

ローレル
  • ローレル

  • 全成分名称
    ローレル油、ゲッケイジュ葉油
  • INCI
    LAURUS NOBILIS OIL、LAURUS NOBILIS LEAF OIL
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.8%
  • ノート
    ミドル~ベース
  • 香りの系統
    ハーバル

ローレル 精油の特徴

葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.8%前後で、薄い黄色をしています。1,8-シネオールが主な成分で、フレッシュでカンファー様の香りは、多くの柑橘系、スパイス系、ローズ系と調和します。香りは柔らかな心地よい爽快感にほのかな甘みのある香りです。バランスの良い香りは、奥行きときつすぎない爽快感を心地よく感じることができます。ブレンドの際は入れすぎると甘い香りが出てきてしまうので、入れすぎないように注意しましょう。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    環式モノテルペン(エーテル類)

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects
Anti-oxidant Effects
Smooth Muscle Relaxation
Work efficiency Improvement

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

痛風性関節炎モデルマウスにおいて、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に小さくなったことが報告されました。1)

消臭 (Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの異臭成分を、それぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置したところ、異臭成分の濃度が減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-malaria Effects)

ヒト脳毛細血管内皮細胞HBMECsにおいて、1,8-シネオール添加によりマラリア原虫が感染した赤血球の付着が減少したことが報告されました。さらに同報告において、マウスマラリアモデルにおいて脳浮腫が抑制されることが報告されました。3)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

線虫モデルにおいて、1,8-シネオール投与により線虫体内の活性酸素種(ROS)レベルが低下することが報告されました。4)

平滑筋の緊張緩和 (Smooth Muscle Relaxation)

マウスおよびモルモットにおいて、カルバコールによって誘発された気管支平滑筋の収縮が1,8-シネオール投与により弛緩することが報告されました。さらに同報告において、カルバコールによって誘発された気管抵抗が、1,8-シネオール投与により減少することが報告されました。5)

作業能率の向上 (Work efficiency Improvement)

作業能率への影響を暗算課題の正答率の変化を指標に評価したところ、1,8-シネオールの香り呈示状態において暗算課題の正答率が高くなることが報告されました。6)

  • 1) Yin et al., Brtish Journal of Pharmacology, 2019
  • 2) Henmi et al., Journal of Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 3) C. dos Santos et al., Plos One, 2022
  • 4) Xin Tan et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2024
  • 5) N.R. Nascimento, et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 2009
  • 6) Kawai, Cosmetology, 2007

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペン(アルコール類)

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

ローレル:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社