• ブラックカラント(クロスグリ、カシス)
  • ブラックカラント(クロスグリ、カシス)

ブラックカラント(クロスグリ、カシス)

  • 学名
    Ribes nigrum
  • 科目
    スグリ科
  • 主な産地
    ポーランド、イギリス、フランス、ロシアなど

植物の特徴

ブラックカラントは、スグリ科の落葉の低木で、高さ1~2mほどに育ちます。葉は緑で、黄白色~桃色の小さな花が咲きます。果実は黒い宝石のような光沢があり、ぶどう房のように枝から垂れ下がって実を付けます。
和名では「クロスグリ」とも呼ばれています。学名の「Ribes」は、ラテン語で「小さく乾燥した実」を意味する「Ribes」、もしくは、アラビア語で「酸っぱい」を意味する「rībās」が由来といわれています。
ブラックカラントは、カシスとも呼ばれ、濃紫色の果実が主に食用として使用されますが、果実は甘酸っぱく苦みもあるので、生食には向かず、ジャムやシロップに加工されることがほとんどです。ほかにも種や蕾、葉なども精油や食用に用いられます。

精油の構成成分

ブラックカラント
  • ブラックカラント

  • 全成分名称
    クロフサスグリ芽エキス
  • INCI
    Ribes Nigrum (Black Currant) Bud Extract
  • 使用部位
    つぼみ、新芽
  • 抽出方法
    溶剤抽出法
  • 採油率
    3.3%
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    フルーティー

ブラックカラント 精油の特徴

つぼみ、新芽から溶剤抽出によって得られる精油は3.3%前後で、固形を希釈すると濃緑色を帯びた色をしています。β-カリオフィレンが主な成分で、やや酸味と苦みのある、カシスの実そのもののようなフルーティーな香りが特徴です。人によっては若干生臭さのようなものを感じることがありますが、香れば香るほど癖になるような香りです。精油の中でも数少ない、柑橘以外のフルーツノートとしても人気です。多くの精油と相性が良いですが、特にローズやジャスミンなどの力強いフローラルと相性が良く、シトラスと合わせるとよりジューシーさが感じられるのでおすすめです。入れすぎるとあとから香りが強く出てきてしまうので、ブレンドの際は少量ずつ足していき、バランスを見ながら追加していくのがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • β-Caryophyllene 11.2%
  • 2-(4-Hydroxyphenyl)ethyl alcohol 6.8%
  • Caryophyllene oxide 4.3%
  • α-Humulene 4.1%
  • Terpinen-4-ol 3.9%
  • Terpinolene 3.7%
  • p-Cymen-8-ol 3.1%
  • δ-3-Carene 3.0%
  • Humulene epoxide 1.9%
  • other components 58.0%

構成成分の効果・効能・作用

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    環式セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

テルピネン-4-オール

Terpinen-4-ol

テルピネン-4-オール
  • IUPAC名
    4-Methyl-1-propan-2-ylcyclohex-3-en-1-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    562-74-3
  • 分類
    単環性モノテルペン(アルコール類)

テルピネン-4-オールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects
Anti-inflammatory Effects
Vascular Smooth Muscle Relaxation

抗菌・抗バイオフィルム (Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects)

黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して、発育抑制および殺菌作用を有することが報告されました。さらに同報告においてバイオフィルム形成阻害及び除去作用を有することが報告されました。1)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、テルピネン-4-オール投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少が報告されました。マウス由来マクロファージ細胞RAW264.7において、炎症誘発性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-12の発現が抑制されたことが報告されました。2)

血管平滑筋緊張緩和 (Vascular Smooth Muscle Relaxation)

摘出したラット胸部大動脈において、テルピネン-4-オール添加により緊張状態の血管平滑筋の弛緩を誘導することが報告されました。3)

  • 1) Cordeiro et al., International Journal of Molecular Sciences, 2020
  • 2) Zhang et al., Frontiers in Immunology, 2017
  • 3) Maia-Joca et al., Life Sciences, 2014

IFRA規制

ブラックカラント:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.