• ティーツリー
  • ティーツリー

ティーツリー

  • 学名
    Melaleuca alternifolia
  • 科目
    フトモモ科
  • 主な産地
    オーストラリアなど

植物の特徴

ティーツリーはフトモモ科で、高さ7mほどまで育ちます。花は白や黄色のちいさな花をつけますがフトモモ科特有の独特な放射状の花をしています。葉は小さい笹の様に細長い形状の葉で、香料になる成分が多く含まれています。もともとオーストラリアの先住民は古くからこの葉に薬のような役割があるとして、お茶として飲んでいたりしていたそうですが、オーストラリア探検家のクック船長の隊員がこのティーツリーをお茶として飲んで病気との闘いに使ったときにつけられた名称として知られています。生命力が強く、幹を切り倒してもまたすぐに収穫できるようになります。
ティーツリーはその植物がもつ殺菌消毒力の注目と共に、ヨーロッパなどで広がっていきました。今でも、オーストラリアには大規模な農園で栽培されています。

精油の構成成分

ティーツリー
  • ティーツリー

  • 全成分名称
    ティーツリー葉油
  • INCI
    MELALEUCA ALTERNIFOLIA (TEA TREE) LEAF OIL
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    1.5%
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    ウッディ

ティーツリー 精油の特徴

葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は1.5%前後で、無色~薄い黄色を帯びた色をしています。テルピネン-4-オールが主な成分で、非常に有用な殺菌消毒薬としても知られている為、ルームスプレーやヘアケア等に使われることも多くなっています。シャープで清涼感のあるフレッシュな香りが特徴です。クリーンなややメディシナルな印象と、森のような爽快感があります。よく樟脳に似た香りとも言われます。好みが分かれる香りですが、清潔感があり爽快感の中にやや甘みを感じるこの香りを好む人も多い印象です。様々な精油と好相性ですが、グリーンのノートのみでブレンドするとハーバルな印象が強くなってしまうため、色々な精油でバランスよくブレンドすると良いです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

テルピネン-4-オール

Terpinen-4-ol

テルピネン-4-オール
  • IUPAC名
    4-Methyl-1-propan-2-ylcyclohex-3-en-1-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    562-74-3
  • 分類
    単環性モノテルペン(アルコール類)

テルピネン-4-オールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects
Anti-inflammatory Effects
Vascular Smooth Muscle Relaxation

抗菌・抗バイオフィルム (Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects)

黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して、発育抑制および殺菌作用を有することが報告されました。さらに同報告においてバイオフィルム形成阻害及び除去作用を有することが報告されました。1)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、テルピネン-4-オール投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少が報告されました。マウス由来マクロファージ細胞RAW264.7において、炎症誘発性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-12の発現が抑制されたことが報告されました。2)

血管平滑筋緊張緩和 (Vascular Smooth Muscle Relaxation)

摘出したラット胸部大動脈において、テルピネン-4-オール添加により緊張状態の血管平滑筋の弛緩を誘導することが報告されました。3)

  • 1) Cordeiro et al., International Journal of Molecular Sciences, 2020
  • 2) Zhang et al., Frontiers in Immunology, 2017
  • 3) Maia-Joca et al., Life Sciences, 2014

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    環式モノテルペン(エーテル類)

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects
Anti-oxidant Effects
Smooth Muscle Relaxation
Work efficiency Improvement

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

痛風性関節炎モデルマウスにおいて、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に小さくなったことが報告されました。1)

消臭 (Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの異臭成分を、それぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置したところ、異臭成分の濃度が減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-malaria Effects)

ヒト脳毛細血管内皮細胞HBMECsにおいて、1,8-シネオール添加によりマラリア原虫が感染した赤血球の付着が減少したことが報告されました。さらに同報告において、マウスマラリアモデルにおいて脳浮腫が抑制されることが報告されました。3)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

線虫モデルにおいて、1,8-シネオール投与により線虫体内の活性酸素種(ROS)レベルが低下することが報告されました。4)

平滑筋の緊張緩和 (Smooth Muscle Relaxation)

マウスおよびモルモットにおいて、カルバコールによって誘発された気管支平滑筋の収縮が1,8-シネオール投与により弛緩することが報告されました。さらに同報告において、カルバコールによって誘発された気管抵抗が、1,8-シネオール投与により減少することが報告されました。5)

作業能率の向上 (Work efficiency Improvement)

作業能率への影響を暗算課題の正答率の変化を指標に評価したところ、1,8-シネオールの香り呈示状態において暗算課題の正答率が高くなることが報告されました。6)

  • 1) Yin et al., Brtish Journal of Pharmacology, 2019
  • 2) Henmi et al., Journal of Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 3) C. dos Santos et al., Plos One, 2022
  • 4) Xin Tan et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2024
  • 5) N.R. Nascimento, et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 2009
  • 6) Kawai, Cosmetology, 2007

IFRA規制

ティーツリー:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社