• ニアウリ
  • ニアウリ

ニアウリ

  • 学名
    Melaleuca quinquenervia
  • 科目
    フトモモ科
  • 主な産地
    マダガスカル、ニューカレドニア、オーストラリアなど

植物の特徴

ニアウリは、フトモモ科の大きいもので2030m程に成長することもある樹木です。葉は硬く丈夫な葉を持ち、花は穂状の黄色の花が茎の頂点に咲きます。樹皮は、灰色がかった白い厚みのある紙のようなものをもち、このことから英語では「Paperbark」とも呼ばれています。
ニアウリの学名は、クック船長がオーストラリアへ旅行した1788年頃につけられたといわれています。
古くから薬用や、中東地方の一部では飲料としても用いられてきましたが、現在でも優れた薬用成分があるとされ、マウススプレーや歯磨き粉などでニアウリの精油が使われることがあるようです。

精油の構成成分

ニアウリ
  • ニアウリ

  • 全成分名称
    メラレウカビリジフロラ葉油
  • INCI
    MELALEUCA VIRIDIFLORA LEAF OIL
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.6~1%
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    ウッディ

ニアウリ 精油の特徴

葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.5~1%前後で、無色~淡黄褐色、また緑褐色を帯びた色をしています。「ユーカリプトール」とも呼ばれる1,8-シネオールが主な成分で、スッとした清涼感のある香りです。ケモタイプが2種あるといわれており、このタイプは「シネオールタイプ」と呼ばれています。樟脳のような爽快感の中に甘さと苦味を持ち、やや独特な印象を持ちます。やや甘さのある精油や、優しい香りの精油と相性がよく、レモンやベルガモット、ネロリやイランイランといったフローラルな香りとも合います。香りはやや強いため、ブレンドの際には少しずつ加えることで、バランスの取れた香りに仕上げることができます。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    環式セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    環式モノテルペン(エーテル類)

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects
Anti-oxidant Effects
Smooth Muscle Relaxation
Work efficiency Improvement

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

痛風性関節炎モデルマウスにおいて、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に小さくなったことが報告されました。1)

消臭 (Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの異臭成分を、それぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置したところ、異臭成分の濃度が減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-malaria Effects)

ヒト脳毛細血管内皮細胞HBMECsにおいて、1,8-シネオール添加によりマラリア原虫が感染した赤血球の付着が減少したことが報告されました。さらに同報告において、マウスマラリアモデルにおいて脳浮腫が抑制されることが報告されました。3)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

線虫モデルにおいて、1,8-シネオール投与により線虫体内の活性酸素種(ROS)レベルが低下することが報告されました。4)

平滑筋の緊張緩和 (Smooth Muscle Relaxation)

マウスおよびモルモットにおいて、カルバコールによって誘発された気管支平滑筋の収縮が1,8-シネオール投与により弛緩することが報告されました。さらに同報告において、カルバコールによって誘発された気管抵抗が、1,8-シネオール投与により減少することが報告されました。5)

作業能率の向上 (Work efficiency Improvement)

作業能率への影響を暗算課題の正答率の変化を指標に評価したところ、1,8-シネオールの香り呈示状態において暗算課題の正答率が高くなることが報告されました。6)

  • 1) Yin et al., Brtish Journal of Pharmacology, 2019
  • 2) Henmi et al., Journal of Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 3) C. dos Santos et al., Plos One, 2022
  • 4) Xin Tan et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2024
  • 5) N.R. Nascimento, et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 2009
  • 6) Kawai, Cosmetology, 2007

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

IFRA規制

ニアウリ:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社