• シトロネラ
  • シトロネラ

シトロネラ

  • 学名
    Cymbopogon nardus
  • 科目
    イネ科
  • 主な産地
    インドネシア、スリランカなど

植物の特徴

シトロネラは、イネ科の植物で、高さ1mほどまで育ちます。葉はイネ科特有の緑色で細長い形状をしています。シトロネラ学名の由来は、柑橘の「Citron」に似た香気があることとされ、学名の「Cymbopogon」は、ギリシャ語で船を意味する「Kymbe」と髭を意味する「pogon」の2語の複合語であるとされ、船の形をした髭の多い植物であることに由来しています。世界で最も多く栽培されている香料植物とされています。近縁種にはレモングラスや、パルマローザがあります。シトロネラはセイロン・タイプとジャワ・タイプがあり、収量や内容成分からジャワ・タイプの方がよいという説もあります。西洋では虫除け剤として知られており、活用されてきました。

精油の構成成分

シトロネラ
  • シトロネラ

  • 全成分名称
    コウスイガヤ油
  • INCI
    Cymbopogon Nardus (Citronella) Oil
  • 使用部位
    葉(全草)
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.4%
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    シトラス

シトロネラ 精油の特徴

全草から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.4%前後で、無色~黄褐色を帯びた色をしています。昆虫に対する忌避効果でも知られるシトロネラールが主な成分で、香りは深みのあるレモンのような香りで、甘さのあるグリーンの中に、奥深いドライなトーンを持っています。この草とレモンの合わさったような香りでは、好みが分かれることがあります。また香りの系統ではスパイスへの分類と、シトラスへ分類する人でわかれます。重さの出るような組み合わせよりは、シトラスや爽やかさ、軽さのあるような香りとの相性がおすすめです。香りはやや強く、重たげな印象が主張しやすいため、ブレンドの際は少し少な目にバランスをみながら入れていくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Citronellal 33.9%
  • Geraniol 19.9%
  • Citronellol 12.7%
  • Limonene 4.5%
  • Elemol 2.7%
  • Citronellyl acetate 2.7%
  • Geranyl acetate 2.4%
  • δ-Cadinene 2.3%
  • β-Elemene 2.3%
  • Germacrene D 2.2%
  • Isopulegol 1.4%
  • Eugenol 1.2%
  • other components 11.8%

構成成分の効果・効能・作用

オイゲノール

Eugenol

オイゲノール
  • IUPAC名
    2-methoxy-4-prop-2-enylphenol
  • 分子式
    C10H12O2
  • 分子量
    164.20 g/mol
  • CAS No.
    97-53-0
  • 分類
    フェニルプロパノイド

オイゲノールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-oxidant Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects
Analgesic Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

オイゲノールは、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性や、PMA、H2O2によるヒト好中球のROS発生抑制能を有することが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

大腸菌とリステリア菌の膜結合型ATPアーゼ活性がオイゲノール添加により低下したことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

オイゲノール添加によりヒト胚性肺線維芽細胞MRC-5と肺癌腺癌細胞A549の細胞生存率が低下することや、創傷治癒アッセイやトランスウェルアッセイにより細胞遊走と浸潤能が抑制されることが報告されました。3)

鎮痛 (Analgesic Effects)

人工培養した三叉神経節ニューロンを刺激した際に、オイゲノールはナトリウムチャネルの活動電位を阻害することが報告されました。4)神経細胞のナトリウムチャネルの阻害により痛みの伝達が抑制されることが示唆されました。

  • 1)Perez-Roses et al., J. Agric. Food Chem., 2016
  • 2)Gill et al., Int. J. Food Microb., 2006
  • 3)Fangjun et al., Thoracic Cancer, 2018
  • 4)Hwang et al., Biomolecules, 2020

ゲラニオール

Geraniol

ゲラニオール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    106-24-1
  • 分類
    モノテルペンアルコール

ゲラニオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ヒト臍帯静脈内皮細胞へのゲラニオール添加により、Ox-LDLによるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

ゲラニオール添加培地において,ボツリヌス菌の生育阻害効果が報告されました。2)その他、複数の菌に対しても報告されています。3)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

肝癌発癌モデルに供されたラットにおいて、ゲラニオール投与群の肝アポトーシス(細胞死)指標が増加したことが報告されました.4)

  • 1)Ammar et al., Nutrients, 2022
  • 2)Ueda et al., Nippon Shokuhin Kogyo gakkaishi, 1982
  • 3)M˛aczka et al., Molecules, 2020
  • 4)Ong et al., Carcinogenesis, 2006

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

IFRA規制

シトロネラール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

シトロネラール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

ゲラニオール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

ゲラニオール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

シトロネロール:
皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

シトロネロール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Citronellal, 2020.
International Fragrance Association, Geraniol, 2023.
International Fragrance Association, Citronellol, 2020.
協力
山本香料株式会社