• クローブ(チョウジ)
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クローブ(チョウジ)

  • 学名
    Eugenia caryophyllus
  • 科目
    フトモモ科
  • 主な産地
    インドネシアなど

植物の特徴

クローブは、別名「チョウジ」と呼ばれるフトモモ科の高さ10-15mほどになる常緑樹です。花を付け、その香りの強さから中国では「百里香」ともよばれていますが、スパイスや精油として使用されるのは開花する前の花蕾です。クローブの由来は、その花蕾が釘に似ていることから、フランス語で釘を意味する「Clou」からきているといわれており、別名としてよく知られる「チョウジ」も中国語で釘を意味する「丁子」の文字が使われています。クローブはスパイスとしての利用のほかに、何世紀も前から、歯痛を麻痺させるため乾燥したクローブを噛んで使用されてきました。そして今でもクローブに含まれる成分は歯科で殺菌、鎮痛に使用され、インドネシアなどで多く生産されています。

精油の構成成分

クローブ
  • クローブ

  • 全成分名称
    チョウジつぼみ油
  • INCI
    Eugenia Caryophyllus (Clove) Bud Oil
  • 使用部位
    つぼみ
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留
  • 採油率
    15%(乾燥)
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    スパイス

クローブ 精油の特徴

つぼみから水蒸気蒸留によって得られる精油は15%前後で、無色~淡い黄色を帯びた色をしています。抗菌作用や、鎮痛作用で知られるオイゲノールが主な成分で、この成分からメディシナルな印象があります。香りはスパイシーさと甘さのある、クローブ特有の力強くエキゾチックな香りです。多くの精油と好相性ですが、ラベンダーやパチュリ、ローズなど比較的甘みのある強い香りとあわせやすいです。ほんの少量、ブレンドの隠し味として加えると深みのある甘さで奥行き感のある香りになります。香りが強い精油のため、ブレンドの際はあまり入れすぎないようバランスをみながら入れていくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Eugenol 73.0%
  • Eugenyl acetate 16.0%
  • β-Caryophyllene 6.6%
  • other components 4.4%

構成成分の効果・効能・作用

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    二環性セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

オイゲノール

Eugenol

オイゲノール
  • IUPAC名
    2-methoxy-4-prop-2-enylphenol
  • 分子式
    C10H12O2
  • 分子量
    164.20 g/mol
  • CAS No.
    97-53-0
  • 分類
    フェニルプロパノイド

オイゲノールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects
Analgesic Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

オイゲノールは、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性や、PMA、H2O2によるヒト好中球のROS発生抑制能を有することが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

大腸菌とリステリア菌の膜結合型ATPアーゼ活性がオイゲノール添加により低下したことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

オイゲノール添加によりヒト胚性肺線維芽細胞MRC-5と肺癌腺癌細胞A549の細胞生存率が低下することや、創傷治癒アッセイやトランスウェルアッセイにより細胞遊走と浸潤能が抑制されることが報告されました。3)

鎮痛 (Analgesic Effects)

人工培養した三叉神経節ニューロンを刺激した際に、オイゲノールはナトリウムチャネルの活動電位を阻害することが報告されました。4)神経細胞のナトリウムチャネルの阻害により痛みの伝達が抑制されることが示唆されました。

  • 1)Perez-Roses et al., J. Agric. Food Chem., 2016
  • 2)Gill et al., Int. J. Food Microb., 2006
  • 3)Fangjun et al., Thoracic Cancer, 2018
  • 4)Hwang et al., Biomolecules, 2020

IFRA規制

オイゲノール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

オイゲノール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Eugenol, 2023.
協力
山本香料株式会社