• ダマスクバラ
  • ダマスクバラ

ダマスクバラ

  • 学名
    Rosa damascena
  • 科目
    バラ科
  • 主な産地
    ブルガリア、トルコ、イラン、フランス、モロッコなど

植物の特徴

ダマスクバラは、バラ科の高さ2m程の低木です。花は多くの品種があり、それぞれで色や芳香の強弱が異なっていますが、代表的なものとしては最も芳香が強い品種と言われる、「ダマスクローズ」があげられます。花は、大きさが手のひらサイズ程で、ピンク色をし甘やかで豊潤な芳しい香りを放ちます。学名の「damascena」の由来としては、ブルガリアに広まった際に「Damas」から入ったといわれており、そこからラテン語の「Rosa damascena」と名付けられたといわれています。
バラは古く紀元前3000年頃から人々と関り、神話にも数多く登場し、儀式や薬用等様々な用途で人々の生活に深く関わってきました。

精油の構成成分

ローズオットー(水蒸気蒸留)
  • ローズオットー(水蒸気蒸留)

  • 全成分名称
    ダマスクバラ花油
  • INCI
    Rosa Damascena Flower Oil
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.02%
  • ノート
    ミドル~ベース
  • 香りの系統
    フローラル

ローズオットー(水蒸気蒸留) 精油の特徴

花から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.02%前後で、無色~濃黄色を帯びた色をしています。シトロネロールやゲラニオールが主な成分で、ややとろみがあり低温では固まる性質を持っています。香りは蜜のような華やかな豊潤な甘さと、ややドライにも感じるグリーン調もほのかに感じます。ローズアブソリュートの精油に比べ、香り立ちの華やかさと、ややフルーティーにも感じる芳香が特長的です。トルコ産の精油も多く流通していますが、品質的にはブルガリア産が最も良いと言われています。レモン、グレープフルーツといった爽快感のあるシトラスや、ウッディやハーバルの精油と相性が良く、フレッシュさと甘さの引き立つブレンドに仕上がります。香りは強いため、ブレンドの際はあまり入れすぎないようにバランスをみながら入れていくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Citronellol 26.3%
  • Geraniol 16.8%
  • Nerol 8.0%
  • Limonene 6.5%
  • Farnesol 1.6%
  • Citral 1.6%
  • Linalool 1.6%
  • 1,8-Cineole 1.2%
  • Methyl eugenol 1.1%
  • other components 35.5%

構成成分の効果・効能・作用

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    単環式モノテルペンエーテル

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

脚に炎症があるマウスで、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に少なくなったことが報告されました。1)

消臭(Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの代表的な異臭成分をそれぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置すると異臭成分が顕著に減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-inflammatory Effects)

1,8-シネオール添加によりマラリア感染赤血球の感染細胞が減少し、さらに細胞内でのマラリア原虫増殖抑制や、感染による脳浮腫も抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Henmi et al., J. Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 2)Yin et al., Br J Pharmacol., 2019
  • 3)Santos et al., plos one, 2022

ゲラニオール

Geraniol

ゲラニオール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    106-24-1
  • 分類
    モノテルペンアルコール

ゲラニオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ヒト臍帯静脈内皮細胞へのゲラニオール添加により、Ox-LDLによるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

ゲラニオール添加培地において,ボツリヌス菌の生育阻害効果が報告されました。2)その他、複数の菌に対しても報告されています。3)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

肝癌発癌モデルに供されたラットにおいて、ゲラニオール投与群の肝アポトーシス(細胞死)指標が増加したことが報告されました.4)

  • 1)Ammar et al., Nutrients, 2022
  • 2)Ueda et al., Nippon Shokuhin Kogyo gakkaishi, 1982
  • 3)M˛aczka et al., Molecules, 2020
  • 4)Ong et al., Carcinogenesis, 2006

シトラール

Citral

シトラール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dienal
  • 分子式
    C10H16O
  • 分子量
    152.23 g/mol
  • CAS No.
    5392-40-5
  • 分類
    モノテルペン

シトラールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、シトラール投与群では脳内モノアミン量増加が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Acti-bacterial Effects)

コウジカビを培地で生育させ、シトラールを添加したところ他の精油成分と比較して高い抗菌活性を示し、また複数の真菌に対して活性の持続時間も長いことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

ヒトの乳癌由来3次元培養細胞にシトラールを与えると濃度依存的に細胞集合体が小さくなることが報告されました。さらにアポトーシス細胞を検出するために利用されるAnnexinV/7AADフローサイトメトリーを用いた実験において、シトラール供与によるアポトーシス細胞の増加が報告されました。3)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)岡村、木材保存、2002
  • 3)Nigjeh et al., BMC Complementary and Alternative Medicine, 2018

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペンアルコール

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

シトロネロール:
皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

シトロネロール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

ゲラニオール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

ゲラニオール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Citronellol, 2020.
International Fragrance Association, Geraniol, 2023.
協力
山本香料株式会社