• ラベンダー
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ラベンダー

  • 学名
    Lavandula angustifolia
  • 科目
    シソ科
  • 主な産地
    フランス、ブルガリアなど

植物の特徴

ラベンダーはシソ科の植物で、非常に多くの種類があり、多年草のものやそうでないものもあります。花は、種類によっては、白やピンクの花が咲きますが、私たちのよく知るのは紫色の花をしたもので、真正ラベンダーというものです。ラベンダーは、古来ローマでは香りだけでなく、殺虫作用、消毒作用が良く知られていました。そのため、お風呂などに入れて傷を洗い、癒すことにも使われていました。このため、学名の Lavandula はラテン語の lavo「洗う」という意味の言葉からつけられたという説と、花の特徴をとって、同じくラテン語のlividus「青色」から来たという説があります。ラベンダーの原産地は、地中海南岸といわれていますが、ローマ人によって、イギリスに持ち込まれ、今では広く栽培されています。

精油の構成成分

ラベンダー
  • ラベンダー

  • 全成分名称
    ラベンダー油
  • INCI
    LAVANDULA ANGUSTIFOLIA (LAVENDER) OIL
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.6-0.7%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    フローラル

ラベンダー 精油の特徴

花から水蒸気蒸留によって得られる精油は、0.6%-0.7%%前後で、無色〜薄い黄色をしています。リナロールや酢酸リナリルなどのリラックス成分が主な成分で、優しく穏やかな豊潤な甘さをたたえた香りに、グリーンの清々しい清涼感を感じます。ラバンジン同様に幅広い用途や香調に有用な素材です。数多くのシトラスとも相性が良い精油ですがシトラスだけに限らず、鋭い爽快感を持つティーツリーや、深さや苦さのあるようなヒバやベチバーといった精油とも調和する素材です。ブレンドでは、全体を丸くし調和してくれるような役割が得意です。ブレンドがうまくいかない時に少量加えるとバランスが整います。ブレンドはニュートラルな強さのため、ブレンドのバランスをみて追加していくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

酢酸リナリル

Linalyl acetate

酢酸リナリル
  • IUPAC名
    3,7-dimethylocta-1,6-dien-3-yl acetate
  • 分子式
    C12H20O2
  • 分子量
    196.29 g/mol
  • CAS No.
    115-95-7
  • 分類
    モノテルペン(エステル類)

酢酸リナリルの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Sleep Improvement
Analgesic Effects
Melanogenesis Inhibition

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽腫細胞株SH-SY5Yに対して酢酸リナリルを添加すると、過酸化水素処理による活性酸素種(ROS)産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

酢酸リナリルの腹膜注射により座骨神経損傷モデルラットの痛覚過敏症状が軽減され、慢性炎症で増加するサイトカインであるTSLPやIL-33の発現が抑制されたことが報告されました。2)

睡眠の質向上(Sleep Improvement)

酢酸リナリルの香りの吸入によりマウスの起きている時間が減少し、ノンレム睡眠の時間が伸びたことが報告されました。3)

鎮痛(Analgesic Effects)

マウス後根神経節ニューロンにおけるカプサイシン、酸、熱に対するCa2+応答が酢酸リナリルの添加により低下したことが報告され、TRPV1チャネルの応答低下による痛み受容感度低下が示唆されました。4)

メラニン産生抑制(Melanogenesis Inhibition)

B16マウスメラノーマ細胞において、メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)処理によるメラニン産生およびチロシナーゼ活性が抑制されたことが報告されました。5)

  • 1) Jongwachirachai et al., Neurochemical Research, 2024
  • 2) Lu et al., Neurochemical Research, 2022
  • 3) Ren et al., JournalofEthnopharmacology, 2025
  • 4) Hashimoto et al., Biomedical Research, 2024
  • 5) Peng et al., Plos One, 2014

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    環式セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

テルピネン-4-オール

Terpinen-4-ol

テルピネン-4-オール
  • IUPAC名
    4-Methyl-1-propan-2-ylcyclohex-3-en-1-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    562-74-3
  • 分類
    単環性モノテルペン(アルコール類)

テルピネン-4-オールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects
Anti-inflammatory Effects
Vascular Smooth Muscle Relaxation

抗菌・抗バイオフィルム (Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects)

黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して、発育抑制および殺菌作用を有することが報告されました。さらに同報告においてバイオフィルム形成阻害及び除去作用を有することが報告されました。1)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、テルピネン-4-オール投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少が報告されました。マウス由来マクロファージ細胞RAW264.7において、炎症誘発性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-12の発現が抑制されたことが報告されました。2)

血管平滑筋緊張緩和 (Vascular Smooth Muscle Relaxation)

摘出したラット胸部大動脈において、テルピネン-4-オール添加により緊張状態の血管平滑筋の弛緩を誘導することが報告されました。3)

  • 1) Cordeiro et al., International Journal of Molecular Sciences, 2020
  • 2) Zhang et al., Frontiers in Immunology, 2017
  • 3) Maia-Joca et al., Life Sciences, 2014

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    環式モノテルペン(エーテル類)

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects
Anti-oxidant Effects
Smooth Muscle Relaxation
Work efficiency Improvement

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

痛風性関節炎モデルマウスにおいて、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に小さくなったことが報告されました。1)

消臭 (Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの異臭成分を、それぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置したところ、異臭成分の濃度が減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-malaria Effects)

ヒト脳毛細血管内皮細胞HBMECsにおいて、1,8-シネオール添加によりマラリア原虫が感染した赤血球の付着が減少したことが報告されました。さらに同報告において、マウスマラリアモデルにおいて脳浮腫が抑制されることが報告されました。3)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

線虫モデルにおいて、1,8-シネオール投与により線虫体内の活性酸素種(ROS)レベルが低下することが報告されました。4)

平滑筋の緊張緩和 (Smooth Muscle Relaxation)

マウスおよびモルモットにおいて、カルバコールによって誘発された気管支平滑筋の収縮が1,8-シネオール投与により弛緩することが報告されました。さらに同報告において、カルバコールによって誘発された気管抵抗が、1,8-シネオール投与により減少することが報告されました。5)

作業能率の向上 (Work efficiency Improvement)

作業能率への影響を暗算課題の正答率の変化を指標に評価したところ、1,8-シネオールの香り呈示状態において暗算課題の正答率が高くなることが報告されました。6)

  • 1) Yin et al., Brtish Journal of Pharmacology, 2019
  • 2) Henmi et al., Journal of Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 3) C. dos Santos et al., Plos One, 2022
  • 4) Xin Tan et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2024
  • 5) N.R. Nascimento, et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 2009
  • 6) Kawai, Cosmetology, 2007

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペン(アルコール類)

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

  • International Fragrance Association, Linalool, 2004.
参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社