• スイートオレンジ
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スイートオレンジ

  • 学名
    Citrus sinensis
  • 科目
    ミカン科
  • 主な産地
    ブラジル、アメリカ、イタリア、コスタリカなど

植物の特徴

スイートオレンジは、ミカン科に属し、20℃前後の適度な温度で育つ低木で、その葉は楕円形をしています。種類も非常に多く大別すると 1.バレンシア、シャムーティオレンジなどの普通オレンジ系、2.ネーブルオレンジ系、3.ブラッドオレンジ系、4.無酸オレンジ系などがあります。果実はあざやかな黄色~だいだい色で、酸味と甘さがあり、さわやかな柑橘系の香りがします。皮は滑らかではなく粗いのが特徴です。オレンジの由来はインドのサンスクリッド、ドラヴィダ語にあるとされ、ヨーロッパへの普及と共に今日の名前になったといわれています。オレンジの原木自体も原生地は諸説ありますが、インドからヒマラヤを越え、ヨーロッパに伝わり、全世界で様々な品種を生み出しています。人々の生活と共に多種多様に発展してきた植物です。

精油の構成成分

スイートオレンジ(圧搾)
  • スイートオレンジ(圧搾)

  • 全成分名称
    オレンジ果皮油、オレンジ油
  • INCI
    CITRUS AURANTIUM DULCIS (ORANGE) PEEL OIL、CITRUS AURANTIUM DULCIS (ORANGE) OIL
  • 使用部位
    果皮
  • 抽出方法
    圧搾法
  • 採油率
    0.6%
  • ノート
    トップ
  • 香りの系統
    シトラス

スイートオレンジ(圧搾) 精油の特徴

果皮から圧搾によって得られる精油は0.6%前後で、橙色〜深橙色を帯びた色をしています。柑橘らしさを醸し出すリモネン、ミルセンが主な成分で、含有量は少ないですが、甘い香りのオクタナールという成分などで特徴づけられています。香りは甘さと爽やかさを兼ね備え、フレッシュなその香りは気分を明るくしてくれるトーンを持っています。日本でも老若男女問わず、温かみのあるこの香りを好む人が多く、気持ちをほぐしてくれるような印象を持ちます。多くの精油と好相性で、馴染み深く心地よい香りは、苦手な香りやブレンドがうまくいかない時に加えると、バランスの良い香りに整えてくれます。香りの強さは弱く、少し多めに入れるとバランスがとりやすいです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Limonene 95.1%
  • Myrcene 2.2%
  • other components 2.7%

構成成分の効果・効能・作用

ミルセン

Myrcene

ミルセン
  • IUPAC名
    7-methyl-3-methylideneocta-1,6-diene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    123-35-3
  • 分類
    モノテルペン

ミルセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-cancer Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞NHDFにおいて、UVB照射することで生成された活性酸素(ROS)レベルが、ミルセン共存下では濃度依存的に低減することが報告されました。1)
その他、ミルセンの抗酸化作用に関して複数報告されています。2) 3)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

ヒト軟骨細胞HCHにおいて、ミルセンは炎症誘発性サイトカインであるIL-1βによるNO産生を抑制することが報告されました。4)
炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、ミルセン投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少、結腸長さの回復が確認されました。ヒト大腸腺癌細胞HT-29において、TNF-α誘発によるCOX-2、CXCL-1、IL-8mRNA発現がミルセン添加により発現抑制されたことが報告されました。5)

抗癌(Anti-cancer Effects)

ヒト由来癌細胞Helaに対して、細胞毒性を有することが示されました。さらに細胞遊走、細胞増殖速度の抑制、細胞形態の変化への影響が報告されました。6)

  • 1) Hwang, E. et al., The American Journal of Chinese Medicine, 2017
  • 2) Ciftci O et al., Toxicology and Industrial Health, 2011
  • 3) Ciftci O et al., Neurochemical Research, 2014
  • 4) Rufino AT et al., European Journal of Pharmacology, 2015
  • 5) Almarzooqi S et al., molecules, 2022
  • 6) P Luca et al., molecules, 2023

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

IFRA規制

Citrus oils and other furocoumarins containing essential oils:
柑橘類の精油に含まれるフロクマリン類(ベルガプテン)による光毒性を生じる可能性があるため、最終製品中のフロクマリン類(ベルガプテン)は15ppm以下と規定されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

リモネン:
酸化したリモネンは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があります。リモネン含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Citrus oils and other furocoumarins containing essential oils, 2020.
International Fragrance Association, Limonene, 1995.
協力
山本香料株式会社