• カメボウキ(ホーリーバジル)
  • カメボウキ(ホーリーバジル)

カメボウキ(ホーリーバジル)

  • 学名
    Ocimum tenuiflorum
  • 科目
    シソ科
  • 主な産地
    ネパール・インド・アフリカなど

植物の特徴

カメボウキ(ホーリーバジル)は、シソ科の植物で約50cmほど成長します。花は、春から晩秋まで紫色の花が咲き、葉は緑色と紫色のものをもつ2種があります。カメボウキの別名であるホーリーバジルは、インドで古来より神聖な植物として扱われてきました。これにキリスト教徒が聖名を与えて、ホーリーバジルと呼ぶようになったといわれています。ホーリーバジルは、アーユルヴェーダでは何千年にも渡りアダプトゲンハーブ(精神的、肉体的抵抗力を高めるハーブ)として知られてきました。また、インドでは宮殿で最高位の女神ブリンダヴァニに捧げるとされる神聖な植物として扱われたり、聖職者のバラモンが死亡した際に添えるなど、神聖な植物として多くの場面で用いられてきました。タイでは料理などにも使われてとても有名で、ネパールや、インド、アフリカなどを産地としています。

精油の構成成分

ホーリーバジル
  • ホーリーバジル

  • 全成分名称
    カミメボウキ油
  • INCI
    Ocimum Tenuiflorum Oil
  • 使用部位
    全草
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.37%-0.4%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    ハーバル

ホーリーバジル 精油の特徴

全草から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.37-0.4%前後で、淡黄色を帯びた色をしています。オイゲノールが主な成分で、収穫時期が異なることで、印象の異なる精油になります。通常の暑い時期に得られる精油よりも、やや早い寒い時期に得られる精油は甘さが減り、グリーン調のハーバル感がより強く感じられます。ラベンダーやゼラニウムといったフローラルな甘さを持つ精油や、レモンやレモングラスといった爽やかな爽快感のある精油と相性が良いです。香りはやや強く、ブレンドの際は少し少なめにバランスをみながら入れていくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Eugenol 23.7%
  • Estragole 14.8%
  • 1,8-Cineole 12.9%
  • β-Bisabolene 12.2%
  • Bisabolene 11.0%
  • Ocimene 5.0%
  • α-Humulene 2.4%
  • β-Caryophyllene 2.0%
  • Germacrene D 1.9%
  • trans-α-Bergamotene 1.9%
  • β-Pinene 1.5%
  • other components 10.9%

構成成分の効果・効能・作用

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    単環式モノテルペンエーテル

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

脚に炎症があるマウスで、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に少なくなったことが報告されました。1)

消臭(Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの代表的な異臭成分をそれぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置すると異臭成分が顕著に減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-inflammatory Effects)

1,8-シネオール添加によりマラリア感染赤血球の感染細胞が減少し、さらに細胞内でのマラリア原虫増殖抑制や、感染による脳浮腫も抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Henmi et al., J. Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 2)Yin et al., Br J Pharmacol., 2019
  • 3)Santos et al., plos one, 2022

オイゲノール

Eugenol

オイゲノール
  • IUPAC名
    2-methoxy-4-prop-2-enylphenol
  • 分子式
    C10H12O2
  • 分子量
    164.20 g/mol
  • CAS No.
    97-53-0
  • 分類
    フェニルプロパノイド

オイゲノールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-oxidant Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects
Analgesic Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

オイゲノールは、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性や、PMA、H2O2によるヒト好中球のROS発生抑制能を有することが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

大腸菌とリステリア菌の膜結合型ATPアーゼ活性がオイゲノール添加により低下したことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

オイゲノール添加によりヒト胚性肺線維芽細胞MRC-5と肺癌腺癌細胞A549の細胞生存率が低下することや、創傷治癒アッセイやトランスウェルアッセイにより細胞遊走と浸潤能が抑制されることが報告されました。3)

鎮痛 (Analgesic Effects)

人工培養した三叉神経節ニューロンを刺激した際に、オイゲノールはナトリウムチャネルの活動電位を阻害することが報告されました。4)神経細胞のナトリウムチャネルの阻害により痛みの伝達が抑制されることが示唆されました。

  • 1)Perez-Roses et al., J. Agric. Food Chem., 2016
  • 2)Gill et al., Int. J. Food Microb., 2006
  • 3)Fangjun et al., Thoracic Cancer, 2018
  • 4)Hwang et al., Biomolecules, 2020

IFRA規制

オイゲノール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

オイゲノール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

エストラゴール:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

エストラゴール

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Eugenol, 2023.
International Fragrance Association, Estragole, 2023.
協力
山本香料株式会社