• カモミール・ジャーマン
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カモミール・ジャーマン

  • 学名
    Chamomilla recutita(Matricaria chamomilla)
  • 科目
    キク科
  • 主な産地
    ヨーロッパなど

植物の特徴

カモミールジャーマンは、キク科の一・二年草で、50cm前後まで育ちます。葉は、糸状に近い裂片をもつ2~3枚の葉をつけます。花は白く、その香りは甘くフルーティーで、リンゴのような芳香を持ちます。学名の「Matricaria(マトカリア)」は、「マテール(語幹の母)」、または婦人の病気治療に用いられることから、ラテン語の「マトリックス(子宮)」に由来してつけられたものと言われています。カモミールジャーマンはヨーロッパでは、薬用に用いられ、ハーブティーにもよく好まれます。ヨーロッパが原産ですが、今日まで世界各地で薬用ハーブやお茶・観賞用として栽培されています。

精油の構成成分

カモミール・ジャーマン
  • カモミール・ジャーマン

  • 全成分名称
    カミツレ花油
  • INCI
    Chamomilla Recutita (Matricaria) Flower Oil
  • 使用部位
    全草/花
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    花 0.05%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    フローラル

カモミール・ジャーマン 精油の特徴

全草または花から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.05%前後で、薄青色~青色を帯びた色をしています。ビサボロールオキサイドA、カマズレン、β-ファルネセンなどが主な成分で、カマズレンを含むことで青色の独特の色を呈しています。ほんのりとしたフローラルな甘さと、薬を思わせるような香りにグリーンのトーンを持っています。ブレンドに難しい精油の一つとして有名で、芳香用として使用されることは少ないですが、イランイランのような深い豊潤な香り、またグレープフルーツやティーツリーのような爽快さやドライ感のある香りと相性が良いです。香りの強さはやや強く、少量で香りの存在感がでるためブレンドの際には少なめに調整することがポイントです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • α-Bisabolol oxide A 45.0%
  • β-Farnesene 17.5%
  • α-Bisabolol oxide B 6.1%
  • 2-(hexa-2,4-diyn-1-ylidene)-1,6-dioxaspiro[4,4]-3-nonene 4.9%
  • Bisabolone oxide 4.6%
  • α-Bisabolol 1.9%
  • Chamazulene 1.6%
  • Germacrene D 1.1%
  • other components 17.3%

構成成分の効果・効能・作用

カマズレン

Chamazulene

カマズレン
  • IUPAC名
    7-ethyl-1,4-dimethylazulene
  • 分子式
    C14H16
  • 分子量
    184.28
  • CAS No.
    529-05-5

カマズレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Hepatoprotective Effects
Repellent Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

リンモリブデン酸還元法において抗酸化物質として知られるアスコルビン酸、α-トコフェロール、BHTより高い還元能を示し、さらにABTS法においてもα-トコフェロール、BHTより高いラジカル消去活性を示したことから、高い抗酸化作用を有することが報告されました。1)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

変形性関節炎を発症したラットにおいて腫れを軽減させ、増加したTNF-αやIL-6の量を低減させたことが報告されました。2)

肝保護 (Hepatoprotective Effects)

アルコール性肝損傷を負ったラットにおいて、カマズレンの経口摂取により損傷が軽減され、炎症を引き起こすタンパク質TNF-αとIL-6が減少したことが報告されました。3)

忌避 (Repellent Effects)

食品害虫であるタバコシバンムシに対して直接与えた場合は致死性、ろ紙に染み込ませて置いた場合には忌避効果を示したことが報告されました。4)

  • 1) Capuzzo et al., Natural Product Research, 2014
  • 2) Ma et al., Bioscience Biotechnology and Biochemistry, 2020
  • 3) Wang et al., Open Life Sciences, 2020
  • 4) Zhou et al., Molecules, 2018

β-ファルネセン

β-Farnesene

β-ファルネセン
  • IUPAC名
    (6E)-7,11-dimethyl-3-methylidenedodeca-1,6,10-triene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.36 g/mol
  • CAS No.
    18794-84-8
  • 分類
    セスキテルペン

β-ファルネセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Human
Insect Repellent Effect
Neurotoxicity Reduction

昆虫忌避 (Insect Repellent Effect)

β-ファルネセンはアブラムシの警報フェロモンとして同定されており、微生物農薬にファルネセンを併用することで忌避効果が高まったことが報告されています。1)

神経毒性軽減 (Neurotoxicity Reduction)

神経毒性の原因物質であるβ-アミロイドを投与したSHSY-5Y細胞にβ-ファルネセンを添加すると、細胞生存率が上昇することが報告され、2) βアミロイドによって引き起こされた神経毒性が軽減されることが示唆されました。

  • 1) Pickett et al., Agriculture, Ecosystems and Environment, 1997
  • 2) Arslan et al., International Journal of Neuroscience, 2021

IFRA規制

カモミール・ジャーマン:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社