• シナモン(セイロンニッケイ)
  • シナモン(セイロンニッケイ)

シナモン(セイロンニッケイ)

  • 学名
    Cinnamomum zeylanicum(Cinnamomum verum)
  • 科目
    クスノキ科
  • 主な産地
    スリランカなど

植物の特徴

シナモン(セイロンニッケイ)は、クスノキ科の多年生の常緑樹で、高さが10mほどまで育ちます。花は薄い緑色をしていて、葉は楕円形で光沢感のある緑色をしています。Cinnamomum zeylanicumの属名の「Cinnamomum」はアラビア語で「肉桂(ニッケイ、ニッキ)」を表し、「zeylanicum」はラテン語でセイロンの意味でスリランカを指しています。近縁植物が多く、アジア東部、インド、マレーシアに現存する品種に限っても250種類はあるといわれています今でもスリランカが多くの生産を占めます。シナモンはスパイスや香り付けのフレーバーとしても有名ですが、何世紀にも渡り、薬用の用途としても使用されてきました。

精油の構成成分

シナモン
  • シナモン

  • 全成分名称
    セイロンニッケイ樹皮油
  • INCI
    Cinnamomum Zeylanicum Bark Oil
  • 使用部位
    樹皮
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.5%(乾燥)
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    スパイス

シナモン 精油の特徴

乾燥した葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.5%前後で、黄色を帯びた色をしています。血管に作用を及ぼすことでも知られるシンナムアルデヒドが主な成分で、香りはシナモン特有のスパイシーさと甘さ、奥行きのある温もりを感じるエキゾチックなトーンがあります。さっぱりとした爽快感のある香りと特に相性が良く、レモンやベルガモットといったシトラス、パチュリやサンダルウッドといったオリエンタルな香りともよく合います。香りはやや強いため、ブレンドの際には少しずつ加えることで、バランスの取れた香りに仕上げることができます。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Cinnamic aldehyde 71.3%
  • β-Caryophyllene 6.7%
  • Linalool 6.7%
  • Cinnamyl acetate 3.5%
  • Eugenol 3.2%
  • β-Phellandrene 1.2%
  • Benzyl benzoate 1.0%
  • other components 6.5%

構成成分の効果・効能・作用

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    二環性セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

オイゲノール

Eugenol

オイゲノール
  • IUPAC名
    2-methoxy-4-prop-2-enylphenol
  • 分子式
    C10H12O2
  • 分子量
    164.20 g/mol
  • CAS No.
    97-53-0
  • 分類
    フェニルプロパノイド

オイゲノールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects
Analgesic Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

オイゲノールは、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性や、PMA、H2O2によるヒト好中球のROS発生抑制能を有することが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

大腸菌とリステリア菌の膜結合型ATPアーゼ活性がオイゲノール添加により低下したことが報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

オイゲノール添加によりヒト胚性肺線維芽細胞MRC-5と肺癌腺癌細胞A549の細胞生存率が低下することや、創傷治癒アッセイやトランスウェルアッセイにより細胞遊走と浸潤能が抑制されることが報告されました。3)

鎮痛 (Analgesic Effects)

人工培養した三叉神経節ニューロンを刺激した際に、オイゲノールはナトリウムチャネルの活動電位を阻害することが報告されました。4)神経細胞のナトリウムチャネルの阻害により痛みの伝達が抑制されることが示唆されました。

  • 1)Perez-Roses et al., J. Agric. Food Chem., 2016
  • 2)Gill et al., Int. J. Food Microb., 2006
  • 3)Fangjun et al., Thoracic Cancer, 2018
  • 4)Hwang et al., Biomolecules, 2020

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペンアルコール

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

シンナムアルデヒド:
皮膚感作や全身毒性を生じる可能性があるため、最終製品での配合制限があります。

シンナムアルデヒド

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Cinnamic aldehyde,2020
International Fragrance Association, Linalool, 2004
協力
山本香料株式会社