• ロザリーナ
  • ロザリーナ

ロザリーナ

  • 学名
    Melaleuca ericifolia
  • 科目
    フトモモ科
  • 主な産地
    オーストラリアなど

植物の特徴

ロザリーナは、フトモモ科の高さ6-9mほどの樹木です。葉は、3-10mm程度の細長く柔らかく滑らかな葉を互い違いに生やしています。花は、乳白色の1040の花からなる穂状花序をしており、花がおわった頃に花序の先から茎が伸び、葉が出てくるといわれています。樹皮は、灰色のような薄いものを持っています。ロザリーナの木はティーツリーと同じように、地上近くを伐採しても、複数の幹になって成長を続けることがわかっています。1950年代に初めてオーストラリアで発見された比較的新しい植物です。「ラベンダーティーツリー」という別名をもち、ティーツリーの精油に似ながらも柔らかい香りを持っています。

精油の構成成分

ロザリーナ
  • ロザリーナ

  • 全成分名称
    メラレウカエリシホリア葉油
  • INCI
    Melaleuca Ericifolia Leaf Oil
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.7%
  • ノート
    ハーバル
  • 香りの系統
    トップ~ミドル

ロザリーナ 精油の特徴

全草から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.7%前後で、無色~淡黄色を帯びた色をしています。リラックス成分で知られるリナロールや1.8.シネオールが主な成分で、香りはティーツリーのようなやや酸味のある爽やかさをもちながらも、やや柔らかな印象の香りです。「汗のような香り」とも評されることもあるクセのある香りは好みは分かれますが、ティーツリーよりもクリアな香りの印象を持ち、ブレンドに透明感のあるさわやかさを与えてくれます。甘さを持つ香りと相性がよく、ゼラニウムやラベンダー、ローレルなどは特に相性が良いです。香りの強さはニュートラルですが、入れすぎると爽快感や酸味が際立ってしまうことがあるため、ブレンドの際は少し少なめにバランスをみながら入れていくことがおすすめです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • 1,8-Cineole 32.1%
  • Linalool 26.1%
  • α-Pinene 14.4%
  • Terpineol 3.8%
  • p-Cymene 2.7%
  • Limonene 2.5%
  • Aromandendrene 2.0%
  • β-Pinene 1.8%
  • γ-Terpinene 1.3%
  • Terpineol-4 1.1%
  • other components 12.2%

構成成分の効果・効能・作用

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

α-ピネンの香りを吸入したマウスの脳腫瘍が小さくなった一方、α-ピネン添加によるメラノーマ細胞の増殖はみられなかったことから、心理的な影響が考えられることが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

α-ピネンは青変菌に対して、気体暴露および培地添加の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory)

RAW264.7細胞においてリポ多糖(LPS)添加により炎症を引き起こす物質である一酸化窒素(NO)の産生が誘導されますが、α-ピネン添加によりNO産生が抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2)岡村、木材保存、
  • 3)Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019

1,8-シネオール

1,8-Cineole

1,8-シネオール
  • IUPAC名
    1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    470-82-6
  • 分類
    単環式モノテルペンエーテル

1,8-シネオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Deodorizing Effects
Anti-malaria Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

脚に炎症があるマウスで、1,8-シネオール投与群では炎症による腫れが濃度依存的に少なくなったことが報告されました。1)

消臭(Deodorizing Effects)

スカトールや3-メチルブタン酸などの代表的な異臭成分をそれぞれ1,8-シネオールとともに密閉容器内で静置すると異臭成分が顕著に減少したことが報告されました。2)

抗マラリア (Anti-inflammatory Effects)

1,8-シネオール添加によりマラリア感染赤血球の感染細胞が減少し、さらに細胞内でのマラリア原虫増殖抑制や、感染による脳浮腫も抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Yin et al., Br J Pharmacol., 2019
  • 2)Henmi et al., J. Japan Association on Odor Environment, 2020
  • 3)Santos et al., plos one, 2022

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペンアルコール

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Linalool, 2004.
協力
山本香料株式会社