• グレープフルーツ
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グレープフルーツ

  • 学名
    Citrus paradisi
  • 科目
    ミカン科
  • 主な産地
    イスラエル、アメリカ、アルゼンチン、南アフリカなど

植物の特徴

グレープフルーツは、ミカン科の植物で、高さは約12mぐらいまで成長します。ダークグリーン色の楕円形の葉が交互につき、花は香り高いクリーム色の花が咲きます。果実の生り方が特徴的で、ぶどうの様に数個づつ群がって生り、これがグレープフルーツの名前の由来にもなっています。果実は黄色で、甘さと酸味があり、わずかに苦味を持っています。また種類としては、白肉種と淡紅肉種、紅肉種、有核種と無核種があり、生食用には有色無核種が、加工用としては白肉無核種が好まれています。
歴史的には、18世紀に西インド諸島のバルバドス島で栽培が始まったといわれていますが、1823年ごろにアメリカのフロリダに入り栽培が拡大し、商業的には1930年ごろにフロリダで栽培が盛んになったといわれています。アメリカ合衆国においてはグレープフルーツはポピュラーなフルーツであり、グレープフルーツ油の最大の供給国としても知られています。

精油の構成成分

グレープフルーツ(圧搾)
  • グレープフルーツ(圧搾)

  • 全成分名称
    グレープフルーツ果皮油
  • INCI
    CITRUS GRANDIS (GRAPEFRUIT) PEEL OIL
  • 使用部位
    果皮
  • 抽出方法
    圧搾法
  • 採油率
    0.06%-0.1%
  • ノート
    トップ
  • 香りの系統
    シトラス

グレープフルーツ(圧搾) 精油の特徴

果皮から圧搾によって得られる精油は0.06%-0.1%前後で、得られた精油は黄色~やや赤みを帯びた色をしています。オレンジ・レモンに比べると、少量しか得られません。柑橘類に特徴的なリモネン、ミルセンに加えて、ヌートカトンが主な成分で、香りはヌートカトンによってやや苦味を感じ、加えて柑橘類特徴の爽快感のある酸味があり、爽快感とフレッシュさが印象的なさっぱりとしたトーンの香りです。バランスの良い甘さと苦味を持ち、気分をリフレッシュしたいときや心のデトックスにおすすめです。この特徴をスパイシーな香りと組み合わせ、男性用やユニセックスの製品に応用したり、他の柑橘精油と合わせ、よりフレッシュな効果を生み出す事ができます。香りの強さはやや弱く、少し多めにブレンドの際は少し多めにいれるとバランスが取れます。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Limonene 94.3%
  • Myrcene 2.3%
  • Nootkatone 0.1%
  • other components 3.3%

構成成分の効果・効能・作用

ミルセン

Myrcene

ミルセン
  • IUPAC名
    7-methyl-3-methylideneocta-1,6-diene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    123-35-3
  • 分類
    モノテルペン

ミルセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-cancer Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞NHDFにおいて、UVB照射することで生成された活性酸素(ROS)レベルが、ミルセン共存下では濃度依存的に低減することが報告されました。1)
その他、ミルセンの抗酸化作用に関して複数報告されています。2) 3)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

ヒト軟骨細胞HCHにおいて、ミルセンは炎症誘発性サイトカインであるIL-1βによるNO産生を抑制することが報告されました。4)
炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、ミルセン投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少、結腸長さの回復が確認されました。ヒト大腸腺癌細胞HT-29において、TNF-α誘発によるCOX-2、CXCL-1、IL-8mRNA発現がミルセン添加により発現抑制されたことが報告されました。5)

抗癌(Anti-cancer Effects)

ヒト由来癌細胞Helaに対して、細胞毒性を有することが示されました。さらに細胞遊走、細胞増殖速度の抑制、細胞形態の変化への影響が報告されました。6)

  • 1) Hwang, E. et al., The American Journal of Chinese Medicine, 2017
  • 2) Ciftci O et al., Toxicology and Industrial Health, 2011
  • 3) Ciftci O et al., Neurochemical Research, 2014
  • 4) Rufino AT et al., European Journal of Pharmacology, 2015
  • 5) Almarzooqi S et al., molecules, 2022
  • 6) P Luca et al., molecules, 2023

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    単環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

IFRA規制

グレープフルーツ:
フロクマリン類(ベルガプテン)含有による光毒性の可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

グレープフルーツ

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

リモネン:
酸化したリモネンは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があります。リモネン含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
International Fragrance Association, Grapefruit oil expressed, 2020.
International Fragrance Association, Limonene, 1995.
協力
山本香料株式会社