• コリアンダー(パクチー)
  • コリアンダー(パクチー)

コリアンダー(パクチー)

  • 学名
    Coriandrum sativum
  • 科目
    セリ科
  • 主な産地
    ロシア、エジプト、インド、フランスなど

植物の特徴

コリアンダーは、セリ科の一年草で、草丈は30~60cmほどに育ちます。葉は緑色で根元に近くなるほど広くなる特徴があり、薄いピンク色の散形花序を持ちます。学名の「Coriandrum」の語源は「虫」を意味し、一説によるとギリシャ語の「Koris(カメムシ)」から名付けられたともいわれています。また、学名の「sativum」は、ラテン語で「栽培種の」という意味を持ち、古くから人々が栽培し利用してきたことを示しているとされています。コリアンダーは、植物の各部位を異なる用途で利用される珍しいハーブの一つで、葉は独特の強い香りを持ち生食や料理のトッピングに、種子は乾燥させることでスパイスとして使用されます。各国で呼び名が異なり、英語の「コリアンダー」のほかに、タイ語由来の「パクチー」、中国語由来の「シャンツァイ(香菜)」などの名称で知られています。

精油の構成成分

コリアンダー
  • コリアンダー

  • 全成分名称
    コリアンダー種子油
  • INCI
    Coriandrum Sativum (Coriander) Seed Oil
  • 使用部位
    種子
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.3-1.1%(乾燥)
  • ノート
    トップ
  • 香りの系統
    スパイス

コリアンダー 精油の特徴

乾燥した種子から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.3-1.1%前後で、無色です。リラックス成分として知られるリナロールが主な成分です。香りはやや甘さのあるスパイシーさが特徴で、すっきりとした青みと苦味に、フルーティーな甘さを感じることができます。葉の可食部分は独特な刺激があり好き嫌いがわかれますが、種子の精油はフルーティーで嗅ぎやすく、香水などにもよく使用されています。ブレンドの際には、ローズなどのフローラルや、爽快感のあるシトラスと相性が良いのでおすすめです。香りはやや強く、アクセントなどに少しずつ加えるとバランスが取りやすいです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

β-カリオフィレン

β-Caryophyllene

β-カリオフィレン
  • IUPAC名
    (1R,4E,9S)-4,11,11-trimethyl-8-methylidenebicyclo[7.2.0]undec-4-ene
  • 分子式
    C15H24
  • 分子量
    204.35 g/mol
  • CAS No.
    87-44-5
  • 分類
    環式セスキテルペン

β-カリオフィレンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-depressant Effects
Anti-oxidant Effacts
Neuroprotective Effects
Anti-inflammatory Effects
Wound Healing Effects
Analgesic Effects

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいてβ-カリオフィレン接種によりうつ病様行動の時間が減少したことが報告されました。1)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、神経毒として知られるMPP添加による活性酸素種の発生がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。2)

神経保護 (Neuroprotective Effects)

ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、塩化カドミウムによるアポトーシス誘導がβ-カリオフィレンを添加することで抑制されたことが報告されました。3)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ラット創傷部において、β-カリオフィレン塗布により炎症性サイトカインの発現が抑制されることが報告されました。4)

創傷治癒 (Wound Healing Effects)

マウスより摘出した線維芽細胞およびケラチノサイトにおいて、β-カリオフィレン添加により細胞遊走が亢進されたことが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

疼痛モデルマウスにおいて、β-カリオフィレン接種により足裏への刺激に対する忌避行動の閾値が回復したことが報告されました。6)

  • 1) Bahi et al., Physiology & Behavior, 2014
  • 2) Wang et al., Biomedicine & Pharmacotherapy, 2018
  • 3) Mannino, et al., Int. J. Mol. Sci., 2023
  • 4) Gushiken et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2022
  • 5) Koyama et al., Plos One, 2019
  • 6) Kuwahata, et al., Pharmacology & Pharmacy, 2012

カンファー

Camphor

カンファー
  • IUPAC名
    1,7,7-Trimethylbicyclo[2.2.1]heptan-2-one
  • 分子式
    C10H16O
  • 分子量
    152.24 g/mol
  • CAS No.
    76-22-2
  • 分類
    二環性モノテルペン(ケトン類)

カンファーの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Thermal Sensation Inducing Effects
Blood Flow Promotion

冷温感効果(Thermal Sensation Inducing Effects)

被験者の皮膚へ塗布後、冷感を感じ、時間経過で温感に切り替わることが報告されました。1)ヒト胎児腎由来細胞HEK293において温度感受性チャネルTRPM8の活性化により冷感作用をもつことが報告されました。2)

血行促進(Blood Flow Promotion)

被験者の皮膚に塗布することにより皮膚、筋肉ともに血流が上昇することが報告されました。1)吸入により大脳皮質の脳血流量が増加することが報告されました。3)

  • 1) Kotaka et al., The Pharmaceutical Society of Japan, 2014
  • 2) Selescu et al., Chemical Senses, 2013
  • 3) 株式会社ファンケル・高砂香料工業株式会社, 特許6660783(特開 2017-171609), 脳血流改善剤

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

ゲラニオール

Geraniol

ゲラニオール
  • IUPAC名
    (2E)-3,7-dimethylocta-2,6-dien-1-ol
  • 分子式
    C15H26O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    106-24-1
  • 分類
    モノテルペン(アルコール類)

ゲラニオールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial Effects
Anti-cancer Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

ヒト臍帯静脈内皮細胞へのゲラニオール添加により、Ox-LDLによるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

ゲラニオール添加培地において,ボツリヌス菌の生育阻害効果が報告されました。2)その他、複数の菌に対しても報告されています。3)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

肝癌発癌モデルに供されたラットにおいて、ゲラニオール投与群の肝アポトーシス(細胞死)指標が増加したことが報告されました.4)

  • 1)Ammar et al., Nutrients, 2022
  • 2)Ueda et al., Nippon Shokuhin Kogyo gakkaishi, 1982
  • 3)M˛aczka et al., Molecules, 2020
  • 4)Ong et al., Carcinogenesis, 2006

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペン(アルコール類)

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

  • International Fragrance Association, Linalool, 2004.
参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.