• ベルガモット
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ベルガモット

  • 学名
    Citrus bergamia
  • 科目
    ミカン科
  • 主な産地
    ブラジル、コートジボワール、モロッコ、ポルトガル、ギニア、イタリアなど

植物の特徴

ベルガモットは、ミカン科で樹木は4m前後までに育ちます。葉は緑で、花は小さく白い花を咲かせますが、果実は黄緑色をしているのが特徴です。ベルガモットの果実は非常に酸っぱいことで有名で、とてもそのままでは食べられないほどです。ベルガモットの栽培は非常にデリケートで難しく、香料などに利用されることが多いそうです。この木が最初に栽培されたのは、イタリアのベルガモとされており、名前の由来もこの名前からきているといわれています。原産地は主にイタリアのカラブリア地方でイオニア海とチオニア海の海岸地域に位置しています。その他生産地としては、ブラジル、コートジボワール、モロッコ、ポルトガル、ギニアにおいて栽培されています。

精油の構成成分

ベルガモット(圧搾・フロクマリンフリー)
  • ベルガモット(圧搾・フロクマリンフリー)

  • 全成分名称
    ベルガモット果実油、ベルガモット果皮油
  • INCI
    CITRUS AURANTIUM BERGAMIA (BERGAMOT) FRUIT OIL、CITRUS AURANTIUM BERGAMIA (BERGAMOT) PEEL OIL
  • 使用部位
    果実、果皮
  • 抽出方法
    圧搾法
  • 採油率
    0.5%
  • ノート
    トップ
  • 香りの系統
    シトラス

ベルガモット(圧搾・フロクマリンフリー) 精油の特徴

果皮を圧搾して得られる精油は0.5%前後で、無色~やや緑がかった色をしています。柑橘精油の中でもとりわけエレガントな香りで、リモネンを主成分とした柑橘特有のフレッシュ感がありながら、リナロールや酢酸リナリルという、ラベンダーやネロリと共通する成分が含まれるため、ややフローラルな表情もあります。クラシックなオーデコロンのトップノートには欠かせない香りですが、他にも幅広い香調と調和し、いろいろな表情を見せてくれる懐の深い精油です。紅茶の”アールグレイ”は、このベルガモットの香りを付けた有名なフレーバーティーです。多くの精油と好相性で、馴染み深く心地よい香りは、苦手な香りやブレンドがうまくいかない時に加えると、バランスの良い香りに整えてくれます
香りの強さは弱く、少し多めに入れるとバランスがとりやすいです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

構成成分の効果・効能・作用

酢酸リナリル

Linalyl acetate

酢酸リナリル
  • IUPAC名
    3,7-dimethylocta-1,6-dien-3-yl acetate
  • 分子式
    C12H20O2
  • 分子量
    196.29 g/mol
  • CAS No.
    115-95-7
  • 分類
    モノテルペン(エステル類)

酢酸リナリルの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Sleep Improvement
Analgesic Effects
Melanogenesis Inhibition

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト神経芽腫細胞株SH-SY5Yに対して酢酸リナリルを添加すると、過酸化水素処理による活性酸素種(ROS)産生が抑制されたことが報告されました。1)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

酢酸リナリルの腹膜注射により座骨神経損傷モデルラットの痛覚過敏症状が軽減され、慢性炎症で増加するサイトカインであるTSLPやIL-33の発現が抑制されたことが報告されました。2)

睡眠の質向上(Sleep Improvement)

酢酸リナリルの香りの吸入によりマウスの起きている時間が減少し、ノンレム睡眠の時間が伸びたことが報告されました。3)

鎮痛(Analgesic Effects)

マウス後根神経節ニューロンにおけるカプサイシン、酸、熱に対するCa2+応答が酢酸リナリルの添加により低下したことが報告され、TRPV1チャネルの応答低下による痛み受容感度低下が示唆されました。4)

メラニン産生抑制(Melanogenesis Inhibition)

B16マウスメラノーマ細胞において、メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)処理によるメラニン産生およびチロシナーゼ活性が抑制されたことが報告されました。5)

  • 1) Jongwachirachai et al., Neurochemical Research, 2024
  • 2) Lu et al., Neurochemical Research, 2022
  • 3) Ren et al., JournalofEthnopharmacology, 2025
  • 4) Hashimoto et al., Biomedical Research, 2024
  • 5) Peng et al., Plos One, 2014

ミルセン

Myrcene

ミルセン
  • IUPAC名
    7-methyl-3-methylideneocta-1,6-diene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    123-35-3
  • 分類
    モノテルペン

ミルセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-cancer Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞NHDFにおいて、UVB照射することで生成された活性酸素(ROS)レベルが、ミルセン共存下では濃度依存的に低減することが報告されました。1)
その他、ミルセンの抗酸化作用に関して複数報告されています。2) 3)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

ヒト軟骨細胞HCHにおいて、ミルセンは炎症誘発性サイトカインであるIL-1βによるNO産生を抑制することが報告されました。4)
炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、ミルセン投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少、結腸長さの回復が確認されました。ヒト大腸腺癌細胞HT-29において、TNF-α誘発によるCOX-2、CXCL-1、IL-8mRNA発現がミルセン添加により発現抑制されたことが報告されました。5)

抗癌(Anti-cancer Effects)

ヒト由来癌細胞Helaに対して、細胞毒性を有することが示されました。さらに細胞遊走、細胞増殖速度の抑制、細胞形態の変化への影響が報告されました。6)

  • 1) Hwang et al., The American Journal of Chinese Medicine, 2017
  • 2) Ciftci et al., Toxicology and Industrial Health, 2011
  • 3) Ciftci et al., Neurochemical Research, 2014
  • 4) Rufino et al., European Journal of Pharmacology, 2015
  • 5) Almarzooqi et al., Molecules, 2022
  • 6) Pincigher et al., Molecules, 2023

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

リモネン

Limonene

リモネン
  • IUPAC名
    1-methyl-4-prop-1-en-2-ylcyclohexene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    138-86-3
  • 分類
    環式モノテルペン

リモネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Memory Improvement
Anti-cancer Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

4℃環境下で寒冷ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン(ストレスに応答するホルモン)濃度の上昇が抑制されたことが報告されました。また、物理的ストレスと精神的ストレスを与えたマウスにおいて、リモネン投与群の血中コルチコステロン濃度が抑制されたことが同報告にて示されました。1)

記憶・学習 (Memory Improvement)

リン酸緩衝生理食塩水中でアセチルコリンエステラーゼをアセチルチオコリンと反応させる際に、リモネンを加えることでアセチルコリンエステラーゼによる分解が抑制されることが報告されました。アセチルコリンエステラーゼは記憶や学習に関与するホルモンであるアセチルコリンを分解してしまうため、分解を止めることにより記憶障害などを防げる可能性があります。また同報告において、スコポラミン投与によるラットの記憶障害が抑制されたことも報告されました。2)

抗癌 (Anti-cancer Effects)

乳癌患者のリモネン摂取により、細胞分裂に関わるタンパク質であるCyclin D1の腫瘍における発現量が低下したことが報告されました。3)その他、リモネンの抗癌作用に関して複数の報告があります。4)5)

  • 1)Fukumoto et al., Stress and Health, 2008
  • 2)Zhou et al., Nutritional Neuroscience,, 2013
  • 3)Miller et al., Cancer Prevntion Research, 2013
  • 4)Ajikumaran Nair S et al., Phytomedicine, 2018
  • 5)Chaudhary et al., Human & Experimental Toxicology, 2012

リナロール

Linalool

リナロール
  • IUPAC名
    3,7-Dimethylocta-1,6-dien-3-ol
  • 分子式
    C10H18O
  • 分子量
    154.25 g/mol
  • CAS No.
    78-70-6
  • 分類
    モノテルペン(アルコール類)

リナロールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-inflammatory Effects
Stress Reduction
Anti-oxidant Effects

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

カラギーナン投与により引き起こされたラットの後肢浮腫がリナロール投与により軽減されることが報告されました。1)

ストレス軽減 (Stress Reduction)

光ストレス下でマウスが暗室へ逃げ込むまでの時間がリナロール投与群において長くなったことや、閉鎖空間内での他個体への攻撃回数と時間がリナロール供与群では減少したことなどが報告されました。2)マウスのストレス応答時の視床下部における遺伝子発現変化が、リナロール吸入により回復することが報告されました。3)その他、リナロールのストレス軽減効果について複数の報告があります。4)5)6)

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞への紫外線照射による活性酸素種(ROS)の発生がリナロール添加により抑制されたことが報告されました。7)

  • 1)Peana et al., Phytomedicine, 2002
  • 2)Linck et al., Phytomedicine, 2010
  • 3)Yoshida et al., Neuroscience Letters, 2017
  • 4)Harada et al., Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2018
  • 5)Souto-Maior et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2011
  • 6)Weston-Green et al., Frontiers in Scichiatry, 2021
  • 7)Gunaseelan et al., Plos One, 2017

IFRA規制

ベルガモット:
フロクマリン類(ベルガプテン)含有による光毒性の可能性があるため、最終製品中の配合制限があります。

ベルガモット

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

  • International Fragrance Association, Bergamot oil expressed, 2020.

リモネン:
酸化したリモネンは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があります。リモネン含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

  • International Fragrance Association, Limonene, 1995.

リナロール:
酸化したリナロールは皮膚刺激や皮膚感作を生じる可能性があるため、リナロール含有量が高い精油は酸化防止剤の添加などによって過酸化物が最低限(20mol/l)に維持した上で使用すべきと示されています。

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

  • International Fragrance Association, Linalool, 2004.
参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社