• タイム(タチジャコウソウ)
  • タイム(タチジャコウソウ)

タイム(タチジャコウソウ)

  • 学名
    Thymus vulgaris
  • 科目
    シソ科
  • 主な産地
    イギリス、アメリカ、フランス、ハンガリー、スペインなど

植物の特徴

タイムは、シソ科に属する多年草で、高さ30cm前後まで成長し、花は白色~薄い赤紫色の花をつけます。葉は、香り高い葉がびっしりと細い枝になり全体からタイムの香りの成分が香ります。このため、タイムの由来もギリシャ語で「香らせる」の意味の「チュモス」から由来したといわれていますが、タイムは抗菌力が高い植物としても知られており、「勇気の象徴」としても有名で、「勇気」という意味の「thumus」から来たともいわれ諸説あります。このタイムは環境に対する適応性も強く, 比較的どんなところでも生育します。ヨーロッパ原産として知られていますが、歴史と共にローマ人から伝えられたとされ、今ではイギリス、アメリカ、フランスなど広い地域で栽培されています。

精油の構成成分

タイム
  • タイム

  • 全成分名称
    タチジャコウソウ花/葉油
  • INCI
    THYMUS VULGARIS (THYME) FLOWER/LEAF OIL
  • 使用部位
    花及び葉
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    0.4-0.6%
  • ノート
    トップ~ミドル
  • 香りの系統
    ハーバル

タイム 精油の特徴

花及び葉から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.4%-0.6%前後で、無色ないしは、少し黄みがかった(白油)と、赤色(赤油)の2種類が存在します。チモールが主な成分で、その香りは料理に風味を添える為に使用される事が多いですが、甘味とほのかなスパイシーの香りが石鹸やローションなどにも使われます。
このチモールタイプの香りは、特徴的な薬草を思わせるような香りですが、この香りはケモタイプによって印象が異なります。調香の際には最もマイルドなリナロールタイプが人気です。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • Thymol 51.0%
  • p-Cymene 29.5%
  • γ-Terpinene 10.0%
  • Carvacrol 3.6%
  • α-Pinene 1.6%
  • Myrcene 1.1%
  • other components 3.3%

構成成分の効果・効能・作用

チモール

Thymol

チモール
  • IUPAC名
    5-methyl-2-propan-2-ylphenol
  • 分子式
    C10H14O
  • 分子量
    150.22 g/mol
  • CAS No.
    89-83-8
  • 分類
    フェノール

チモールの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects
Anti-depressant Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

DPPHおよびABTSラジカル消去法において、抗酸化物質として知られるBHTより高いラジカル消去活性を示し、さらに総抗酸化能測定において、抗酸化物質として知られるアスコルビン酸より高い活性を示すことが報告されました。1)チモールを混合した飼料を摂取したラットにおいて、脳内の抗酸化活性の低下が抑制されたことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

炎症性浮腫モデルマウスにおいて、チモールの投与により浮腫が改善されたことが報告されました。さらに同報告において、チモールを含んだドレッシング材を貼付することで、炎症の改善が促進されたことが報告されました。3)

抗菌・抗バイオフィルム(Anti-bacterial and Anti-biofilm Effects)

黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)に対して、細菌膜を通過し細胞内部に浸透することによって抗菌作用を示すことが報告されました。4)リステリア菌に対して、抗菌およびバイオフィルム形成阻害作用を有することが報告されました。5)

抗うつ(Anti-depressant Effects)

うつ病モデルマウスにおいて、マウスの抑うつ行動や不安行動が減少し、海馬においてBDNF(Brain-derived neurotrophic factor)が増加することが報告されました。6)軽度ストレスうつ病モデルにおいて、マウスの抑うつ行動が減少し、血中ストレスマーカーであるコルチコステロンの増加が抑制され、さらに脳内セロトニン(5-HT)の低下が抑制されることが報告されました。7)

  • 1) Torres-Martínez R et al., Pharmacognosy Magazine ,2017
  • 2) K A Youdim, S G Deans, British Journal of Nutrition, 2000
  • 3) K.R. Riella et al., Journal of Ethnopharmacology,2012
  • 4) T Domenico et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2005
  • 5) U Abhinav et al., Food Microbiology, 2013
  • 6) Capibaribe VCC et al.,Pharmacy and Pharmacology, 2019
  • 7) Deng XY et al., Behavioural Brain Reseach, 2015

ミルセン

Myrcene

ミルセン
  • IUPAC名
    7-methyl-3-methylideneocta-1,6-diene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    123-35-3
  • 分類
    モノテルペン

ミルセンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Anti-oxidant Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-cancer Effects

抗酸化 (Anti-oxidant Effects)

ヒト皮膚線維芽細胞NHDFにおいて、UVB照射することで生成された活性酸素(ROS)レベルが、ミルセン共存下では濃度依存的に低減することが報告されました。1)
その他、ミルセンの抗酸化作用に関して複数報告されています。2) 3)

抗炎症(Anti-inflammatory Effects)

ヒト軟骨細胞HCHにおいて、ミルセンは炎症誘発性サイトカインであるIL-1βによるNO産生を抑制することが報告されました。4)
炎症性腸疾患モデルマウスにおいて、ミルセン投与によりDAIスコア(Disease Activity Index Score)の減少、結腸長さの回復が確認されました。ヒト大腸腺癌細胞HT-29において、TNF-α誘発によるCOX-2、CXCL-1、IL-8mRNA発現がミルセン添加により発現抑制されたことが報告されました。5)

抗癌(Anti-cancer Effects)

ヒト由来癌細胞Helaに対して、細胞毒性を有することが示されました。さらに細胞遊走、細胞増殖速度の抑制、細胞形態の変化への影響が報告されました。6)

  • 1) Hwang, E. et al., The American Journal of Chinese Medicine, 2017
  • 2) Ciftci O et al., Toxicology and Industrial Health, 2011
  • 3) Ciftci O et al., Neurochemical Research, 2014
  • 4) Rufino AT et al., European Journal of Pharmacology, 2015
  • 5) Almarzooqi S et al., molecules, 2022
  • 6) P Luca et al., molecules, 2023

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects

ストレス軽減 (Stress Reduction)

α-ピネンの香りを吸入したマウスの脳腫瘍が小さくなった一方、α-ピネン添加によるメラノーマ細胞の増殖はみられなかったことから、心理的な影響が考えられることが報告されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

α-ピネンは青変菌に対して、気体暴露および培地添加の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory)

RAW264.7細胞においてリポ多糖(LPS)添加により炎症を引き起こす物質である一酸化窒素(NO)の産生が誘導されますが、α-ピネン添加によりNO産生が抑制されることが報告されました。3)

  • 1)Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2)岡村、木材保存、
  • 3)Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019

IFRA規制

タイム:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社