• カモミール・ローマン
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カモミール・ローマン

  • 学名
    Anthemis nobilis
  • 科目
    キク科
  • 主な産地
    西ヨーロッパなど

植物の特徴

カモミール・ローマンは、キク科の多年草で高さ30㎝ほどまで育ちます。カモミールジャーマンとは異なり、茎は地を這うように伸び、花だけでなく、茎や葉からも香りがします。花びらは白く、花芯は黄色をしています。カモミールの由来は、ギリシャ語で「地上の」を意味する「Chamai」と、「リンゴ」を意味する「melon」の2語から成る「地面のリンゴ」からきているといわれています。その由来の通り、地面を踏んで歩くと、花・茎・葉からリンゴのような芳香がします。ガーデンハーブとしても人気ですが、高温多湿の場所を嫌います。

精油の構成成分

カモミール・ローマン
  • カモミール・ローマン

  • 全成分名称
    ローマカミツレ花油
  • INCI
    Anthemis Nobilis Flower Oil
  • 使用部位
  • 抽出方法
    水蒸気蒸留法
  • 採油率
    花 0.15-0.2%
  • ノート
    ミドル
  • 香りの系統
    フローラル

カモミール・ローマン 精油の特徴

花から水蒸気蒸留によって得られる精油は0.2%前後で、淡黄色を帯びた色をしています。アンゲリカ酸イソブチル、アンゲリカ酸ブチルが主な成分で、まるでリンゴのような甘やかな柔らかさのある香りに、わずかに爽快感をもっています。繊細さや可憐さを感じさせながらも、力強さを感じます。爽快感やほろ苦さのあるグリーンマンダリンやベルガモットなどのシトラス、深いウッディな香りを持つサンダルウッドなどの精油と相性が良いです。香りの強さはやや強く、少量で香りの存在感がでるためブレンドの際には少なめに調整することがポイントです。

精油の構成成分

精油の構成成分

※ロット分析データの一例を記載

  • iso-Butyl angelate 32.1%
  • 2-Methylbutyl angelate 16.0%
  • 2-Butenyl angelate 8.3%
  • Pinocarveol 5.2%
  • iso-Butyl-iso-butyrate 4.6%
  • iso-Amyl angelate 4.4%
  • Pinocarvone 3.8%
  • 2-Methylbutyl iso-butyrate 2.8%
  • α-Pinene 2.2%
  • Propyl angelate 1.4%
  • other components 19.2%

構成成分の効果・効能・作用

α-ピネン

α-Pinene

α-ピネン
  • IUPAC名
    (+)-α-Pinene: (1R,5R)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
    (-)-α-Pinene: (1S,5S)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.1]hept-2-ene
  • 分子式
    C10H16
  • 分子量
    136.23 g/mol
  • CAS No.
    (+)-α-Pinene: 7785-70-8
    (-)-α-Pinene: 7785-26-4
  • 分類
    二環式モノテルペン

α-ピネンの効果・効能・作用

in slico in vitro ex vivo in vivo
Non-clinical Clinical
Mice Rats Guinea Pigs Insects Rabbits Human
Stress Reduction
Anti-bacterial Effects
Anti-inflammatory Effects
Anti-tumor Effects
Analgesic Effects
Sleep Improvement

ストレス軽減 (Stress Reduction)

ラットに対して、心理的ストレス負荷を与えることで生じる一過性の体温上昇反応が、α-ピネン吸入群では抑制することが報されました。1)

抗菌 (Anti-bacterial Effects)

木材を青く変色させる青変菌に対して、α-ピネンの接触暴露、および非接触暴露の両方において生育阻害効果を示したことが報告されました。2)

抗炎症 (Anti-inflammatory Effects)

マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞において、リポ多糖(LPS)によって誘導される一酸化窒素(NO)産生が、α-ピネン添加により抑制されることが報告されました。3)
炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリンによって誘導される炎症性サイトカインレベルが、α-ピネン投与により抑制されることが報告されました。6)

抗腫瘍 (Anti-tumor Effects)

C57BL/6マウスにおいて、α-ピネン吸入群では対照群と比較し腫瘍増殖が抑制されたことが報告されました。4)
マウスTリンパ腫細胞株EL-4細胞、およびヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT-4細胞において、α-ピネン添加により細胞増殖が抑制されることが報告されました。さらに同報告において、C57BL/6Jマウスにおける腫瘍細胞の増殖を抑制することが報告されました。5)

鎮痛 (Analgesic Effects)

炎症性疼痛モデルラットにおいて、ホルマリン刺激による侵害受容がα-ピネン投与により緩和することが報告されました。6)

睡眠の質向上 (Sleep Improvement)

被験者に対して、就床時α-ピネンの香り暴露群で入眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が短くなる可能性が示唆され、さらに睡眠効率(全就床時間中の睡眠時間の割合)が高くなる傾向があることが報告されました。7)

  • 1) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 2) 岡村, 木材保存, 2002
  • 3) Kwak et al., Journal of Exercise Rehabilitation, 2019
  • 4) Kusuhara et al., Biomedical Research, 2012
  • 5) Abe et al., Cancer Science, 2024
  • 6) Rahimi et al., Brain Research Bulletin, 2023
  • 7) Tsunetsugu, Cosmetology, 2018

IFRA規制

カモミール・ローマン:
規制なし

※構成成分の規制は、成分の一部を記載

参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ロバート・ティスランド/ロドニー・ヤング, 精油の安全性ガイド, フレグランスジャーナル社, 2018.
バーグ文子, アロマテラピー精油辞典, 成美堂出版, 2022.
アネルズあづさ, 香りを楽しむ 特徴がわかる アロマ図鑑, ナツメ社, 2023.
協力
山本香料株式会社