ー 茶の実の呼称と品種ごとの特徴 ー
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茶の実に関して
お茶から取れる茶の実は、花が咲き終わると、その翌年に実がなります。地域によってこの実の呼称は様々で、茶実(チャジツ)、茶玉(珠)、茶ぼぼ、チャ種子など様々な呼称がありますが、茶の実(ちゃのみ)が最も一般的です。お茶産業が盛んな頃は低い木で管理するため、花があまり咲かないため、茶の実を見るこほとんどありませんでしたが、耕作放棄されたお茶園ではたくさんの茶の実がなることから、お茶農家の方はこの茶の実がなることを昔はよく思っていなかったそうです。
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茶の実の各部位の構造と呼称
茶の実は「鬼殻(オニガラ)」と呼ばれる外皮の中に通常3つ実が入っています。地図上で茶畑が3つの点で表示されるのは、この実の成り方に由来します。また、茶の実は、外側から、「茶実殻」「渋皮」「仁」と呼ばれます。茶実殻は椿の実よりはるかに硬く、その内側に渋皮があり仁を守るように覆っています。仁は茶の実の核で茶の木の子供が大きくなるための栄養分がたくさんつまっており、油分もここに多く含まれています。
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お茶と茶の実の品種による特徴
お茶には、たくさんの品種がありますので、茶の実の外観や形状も様々です。
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やぶきた
煎茶としての王道中の王道のお茶です。煎茶=やぶきた品種と言っても過言ではないくらいで、全国での普及率が最も高く、日本人にとってなじみ深い味わいのお茶です。煎茶らしい清涼感のある爽やかな香りと旨味と渋みの調和が楽しめるお茶です。
茶の実の形状:長辺15.69mm短辺13.91mm、重さ1.5g
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さやまかおり
香りに特徴のある品種で、柏葉のような鼻からスッと抜けるような独特の香気が有り、火入れ(焙煎)することによりその特性がさらに際立ちます。主たる生産地が埼玉県、静岡県ということもあり、深蒸しで製茶されることも多く、濃厚でインパクトのあるしっかりとした味わいのお茶です。
茶の実の形状:データ確認中
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たかちほ
ほぼ九州地方(主に宮崎県)で生産されている品種で釜炒り茶用の品種として開発されましたが、近年は発酵茶としての香りの特性が注目を集めています。草木やよもぎを連想する瑞々しい爽やかな香りとキレのあるすっきりとした味わいが特徴のお茶です。
茶の実の形状:長辺17.16mm短辺14.87mm、重さ1.7g
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かなやみどり
薄めたミルクや豆乳を連想させる個性的な香りを持つ品種です。中晩生品種、及び香りの特性のため覆下栽培されることも多く、鮮緑色の色合いで旨味のある味わいのお茶として生産されています。近年は香りの特性を隠す(※緑茶としては個性的すぎるので敬遠されることも多い)のではなく、生かすために露地栽培で単一品種使用や発酵茶として使用されることも増えています。
茶の実の形状:長辺16.34mm短辺13.89mm、重さ1.9g
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こまかげ
玉露用品種として京都で育成開発されました。晩生及び玉露用品種のため京都で覆下栽培されることが多く、濃緑色の色沢とは裏腹な透明感のある水色と旨味に富んだ奥行きのある味わいが特徴です。また、覆下栽培されることが多い為、品種香よりも覆い香の方が表立ち海苔や海藻のような香りがすることが多くあります。
茶の実の形状:長辺14.14mm短辺12.45mm、重さ1.1g
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茶の実のこれからに期待
茶の実は、お茶に関する研究がほとんどで、茶の実にどういった効果や効能があるかほとんどが明らかになっていません。茶の木は育成に非常に時間がかかるため、茶の実の効果効能が明らかになることによって、茶の実の活用が広がり大事な日本文化の1つであるお茶産業が継続的に継承発展していくように、HRCでは研究開発をしていく予定です。
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協力・監修:茶の実油協会