参考文献
- 戸裕子, 実験医学 マクロファージの多様性, 羊土社, 2018.
創傷治癒とは、傷を負った際に自らの力で再生する機能を指します。
この機能は、人間のあらゆる器官に備わっており、もちろん、肌もこの機能を備えています。肌が何らかのダメージを追うと、この機能が働き、自らの力で自己再生します。肌は最大の臓器にして、外界との隔離器官でもありますが、この機能のおかげで、日常的に肌がダメージを負っても、再生して正常に機能し、人は様々な環境で生きていくことが出来るといえます。
創傷治癒は、大きく3段階のステップで分けられ、1:傷を塞ぎ、2:死んだ組織、異物の除去、3:再生の過程を経て、組織を修復します。このステップ2で死んだ細胞、侵入してきた異物を食べて除去する(貪食する)重要な機能を担っているのがマクロファージです。
マクロファージは、様々な種類が存在し近年研究が盛んに行われており大変注目されていますが、肌においても創傷治癒をはじめ、大変重要な免疫的な機能を担っている細胞です。
今回、マクロファージにブレンド精油*を添加して培養し、蛍光ビーズ(異物に見立てたもの)の貪食の程度を観察した結果、ブレンド精油を添加したマクロファージの方(図右、グラフ右)が滴下しない方(図左、グラフ左)と比べ、優位に蛍光ビーズを取り込んでいることから、ブレンド精油*はマクロファージの貪食する力を亢進したことが新たにわかりました。
これは肌が自ら再生する力、創傷治癒にも重要な働きを示すことが示唆されます。
( * ブレンド精油:ベルガモット精油を中心に、ラベンダー、マジョラム、ローズ マリー、フランキンセンスなどの精油を加えてブレンドしたもの )
ブレンド精油により、マクロファージの貪食機能がアップ
試験方法
ブレンド精油※を添加して培養しておいたマクロファージを蛍光のマイクロビーズと一緒に培養し、マイクロビーズの取り込み(貪食)状態を観察。マイクロビーズを取り込んだマクロファージの割合を算出し、ブレンド精油添加ありなしで比較した。
※ブレンド精油:ベルガモット精油を中心に、ラベンダー、マジョラム、ローズマリー、フランキンセンス などの精油を加えてブレンドしたもの
出典:ポーラ化成研究所調べ
今回の発見により、ブレンド精油が香りによる身体の変化を介した間接的なアプローチに加え、肌への直接的なアプローチによっても創傷治癒を促進することがわかりました。
今後もHRCでは、精油のさらなる可能性を探索していきます。