精油の香りはこうして生まれる ーVol.1 収穫から蒸留までの時間と香気成分の関係ー
HRCでは、精油のホリスティックな力や個性を日々探究しています。
THREEハーブガーデンではさまざまな植物を栽培し、THREEオリジナルの精油を抽出、研究しています。今回は精油の香気成分がどのような要因で変化するのかを2本立てでご紹介します。Vol.1では、収穫から蒸留までの時間に着目しています。
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精油の生産条件と香り
精油づくりは土を耕すところからはじまり、育った植物を収穫・加工・抽出する工程を経て得られます。これらの各工程が変わると精油の香りも変わってきます。たとえば気候が変われば植物の成長や形態に影響し、作り出される香りも変わります。また、抽出方法の違いも得られる精油の香りに大きく寄与します。同じユズの果皮から採れる精油でも、圧搾法で抽出したものは果実そのものを想起させる香り、水蒸気蒸留法で抽出したものはよりクリアな印象を与える香りがします。このように、それぞれの工程が一つの精油の香りに繋がっています。
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収穫後の植物
今回着目したのは、収穫から蒸留開始までの時間です。ハーブを収穫した後そのまま置いておくと、元気がなくなり葉が萎れてきますが、そこに存在する香りにも影響はあるのでしょうか。葉や茎から精油が採れるゼラニウム(Pelargonium graveolens)の香気成分の変化について調べました。
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経過時間の違いと成分
収穫から蒸留までの時間と成分変化を調べるために、収穫直後※、5時間、24時間、48時間経過後に水蒸気蒸留を行いました。得られた精油は超高速 GCシステム(Alpha MOS社製フラッシュGCノーズ Heracles II)を用いて分析し、主要成分のピーク面積を比較しました(図1)。なお、面積は内部標準物質に対する相対面積(%)として示しています。その結果、48時間過するとリナロール、メントン、イソメントン、シトロネロール、ギ酸シトロネリルの含有比率が収穫直後のサンプルと比較して有意に低下しました。特にリナロールは顕著な低下がみられました。
※収穫物の運搬等に30分程度要した
図1. 収穫から蒸留までの時間と主要成分の比較
試験方法:各精油サンプルについて超高速GCシステムを用いて成分分析をし、主要成分のピーク面積値を比較した。
出典:THREE ホリスティックリサーチセンター調べ -
成分変化と香り
リナロールは甘さやフローラル、メントンやイソメントンはフレッシュでミント様、シトロネロールはバラやフローラルの香りを持つ成分であるため、これらが低下することで香りの甘さやフローラル感、フレッシュ感が低下したと考えられます。実際に香りを嗅いでみると、48時間経過後のサンプルは他サンプルと比較して甘さやフレッシュ感が感じられませんでした。今回の結果から、収穫から時間が経つことで植物の見た目だけでなく香気成分も変化していることがわかりました。
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香りを育む生産の工夫
このように、工程が少し変わるだけで香気成分の組成が変化することがわかりました。
植物の状態やその時の成分にも着目しながら生産を行うことは、香り高い精油づくりに繋がっています。