参考文献
- (1) 日本メディカルハーブ協会検定委員会, ハーブ&ライフ検定テキスト, 池田書店, 2015.
THREEホリスティックリサーチセンターは、佐賀県のTHREEハーブガーデンで栽培されたタイム(Thymus vulgaris)から抽出したオリジナル精油の研究をしています。
今回、タイム精油のもつ抗酸化活性と芳香成分チモール・γ-テルピネン・カルバクロールがその活性に及ぼす影響をご紹介します。
タイム(タチジャコウソウ)は、シソ科に属する多年草で樹高は20~30cm、白色~薄い赤紫色の小さな花を輪散花序につけます。原産地はヨーロッパとして知られていますが、歴史と共にローマ人から伝えられたとされ、今ではイギリス、アメリカ、フランスなど香草として広い地域で栽培されています。強い抗菌力を持ち、防腐作用もあるため、ソーセージやソースなどの保存食に利用され、清涼感のある香りは魚料理や肉料理との相性がよいハーブとして知られています。(1)
THREEオリジナルのタイム精油の抗酸化活性についてDPPHラジカル消去法を用いて評価したところ、精油添加なしの場合と比較し、タイム精油添加時は抗酸化活性をもつことが確認されました(図1)。
図1. タイム精油の抗酸化活性
試験方法:DPPHラジカル消去法を用いて抗酸化活性測定を行い、
精油なしと精油ありの吸光度を比較した。精油ありは濃度228.mg/mlのタイム精油を添加。
出典:福岡女子大学・THREE ホリスティックリサーチセンター調べ
超高速GC(Alpha MOS社製フラッシュGCノーズ Heracles II)を用いてタイム精油の芳香成分分析を行い、クロマトグラムの各ピークの保持時間から主要な芳香成分が同定(GC-MSにより別途マススペクトルも確認)されました(表1)。
芳香成分間の相互作用は、タイム精油中の主要芳香成分のうち2種類併用時の抗酸化活性を評価し、Median effect analysisにより算出されたcombination index(CI)により判定しました(CI>1:相殺、CI=1:相加、CI<1:相乗)。効果解析の結果、チモールとγ-テルピネン、カルバクロールとγ-テルピネンの併用効果解析において、相乗効果を発現する比率があることが確認されました(図2)。
この結果から、タイム精油の抗酸化活性にはγ-テルピネンとチモール、カルバクロールの相互作用が寄与している可能性が示唆されました。
図2. γ-テルピネンとカルバクロールの併用効果
試験方法:芳香成分併用によるラジカル阻害率からMedian effect analysisを用いて
濃度レベルにおける相互作用を判定した。
出典:福岡女子大学・THREE ホリスティックリサーチセンター調べ
精油のホリスティックな魅力のひとつである機能的価値。今回、THREEオリジナルのタイム精油に抗酸化活性があることが確認され、さらに精油中に含まれる芳香成分間の相互作用を明らかにしたことで、精油の抗酸化活性には成分間の相乗効果発現が影響している可能性が示唆されました。
精油は100種以上の芳香成分からなり、その複雑な香りを生み出していますが、今回の研究では、芳香成分が持つ機能性についても相互作用することで精油としての魅力に繋がっていることがうかがえます。
本研究は福岡女子大学国際文理学部 食・健康学科 石川洋哉教授との共同研究で行われ、2025年3月の日本農芸化学会2025年度札幌大会、2025年7月の第62回化学関連支部合同九州大会において発表しております。