参考文献
- (1) 活性酸素と酸化ストレス | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
- (2) 後藤英司, 植物環境工学, 2019
- (3) 石川 洋哉, 日本食品保蔵科学会誌, 2020
- (4) 藤沢 章雄, フレグランスジャーナル, 2018
わたしたちは生命活動を営む上で大気中の酸素を利用しています。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、反応性の高い活性酸素に変化します。生体内において種々の代謝過程により生じた活性酸素種は細胞間のシグナル伝達や免疫機能として重要な働きを持つ一方、紫外線やストレス、食生活などの外的要因や加齢に伴う酸化防御機構の低下により、活性酸素が過剰になることで、酸化障害を引き起こし、種々の疾病や老化の促進につながると考えられています。(1)
植物は、温度や水分、紫外線などさまざまな外的環境変化に対応するための生理反応を示しますが、植物体内で活性酸素種が発生すると抗酸化成分の合成が促進することが報告されています。(2)植物など天然物由来成分の抗酸化活性は、酸化防止(品質維持)や生体内の酸化抑制を目的として幅広い分野での応用が期待されています。(3)(4)
今回、精油の種類による抗酸化活性についてDPPHラジカル消去法を用いて評価を行いました。
抗酸化活性は、抗酸化物質であるトロロックスを基準としたTEAC(µg TE/mg)を用いて比較しました(図1)。いずれの精油も抗酸化活性を有することが確認されましたが、精油の種類によって抗酸化活性が異なることが明らかとなりました。
精油の抗酸化活性
図1. 各種精油の抗酸化活性
試験方法:DPPHラジカル消去法を用いて抗酸化活性測定を行い、
TEAC(µg TE/mg)を算出し比較した。
出典:福岡女子大学・THREE ホリスティックリサーチセンター調べ
併用による相互作用は、薬剤の併用効果の解析に汎用されているMedian effect analysisにより算出されたcombination index(CI)により判定しました(CI>1:相殺、CI=1:相加、CI<1:相乗)。ラジカル消去率50%(fa:阻害割合=0.5)において判定すると、カモミール・ジャーマン精油とペパーミント精油の組み合わせ(図2)をはじめ、いくつかの精油の組み合わせにおいて相乗効果が確認されました。
抗酸化活性に寄与する香気成分の特定や相乗効果の要因については、現在解明に向け調査中となります。
2種併用の相乗効果
図2. カモミール・ジャーマン、ペパーミント精油2種類併用による抗酸化活性の相乗効果
試験方法:精油単独および併用による阻害率からMedian effect analysisを用いて濃度レベルにおける相互作用を判定した。
出典:福岡女子大学・THREE ホリスティックリサーチセンター調べ
精油のホリスティックな魅力のひとつである機能的価値。今回、植物の種類により抗酸化活性が異なることが確認されました。さらに組み合わせによる相互作用を確認し、相乗効果が期待できる組み合わせを見出しました。
なお、本研究は福岡女子大学国際文理学部 食・健康学科 石川洋哉教授との共同研究で行われ、2024年6月29日に開催された第61回化学関連支部合同九州大会にて発表しています。また、2025年3月開催予定の日本農芸化学会2025年度札幌大会においても発表予定です。