精油の在処
では、精油は植物の中でどのように存在しているのでしょうか。その在り方も植物や器官により様々です。光学顕微鏡を使って拡大して観てみましょう。
図1はローズゼラニウムというハーブの葉表面を拡大した写真です。中央の小さな玉とその下の柄のような部分は合わせて「腺毛」や「腺鱗」と呼ばれ、葉の表面から外側に突き出 ています5)。精油は玉の部分に溜め込まれ、手で触ると玉が壊れてその匂いが移ります。
これに対してティーツリーの葉の表面に腺鱗は見当たりませんが、光を透過させると細かい「油点(油胞)」が透けて見えます(図2)。葉を切って断面を拡大すると、精油を溜め込んだ油胞が葉の内側にあることが観察できます(図3)。レモンやベルガモットなど、柑橘類の果実に存在する精油も皮の内部の油胞の中に存在します。
このように丸い形をとって存在するものが多い一方で、形は作らずに細胞の間や複数の細胞が繋がっているところで観察できる精油もあります5), 6)。例えばベチバーは根から精油がとれる植物ですが、乾燥した根の断面を観察すると、細胞の間や隙間(図4で淡い黄色に光っている部分)に精油が少しずつ存在している様子が見えます。
これらの腺鱗や油胞は非常に小さいため肉眼では観察が難しいですが、拡大して観察してみると美しく神秘的な世界が広がっています。小さな精油の粒たちはそれぞれの場所で植物にとって欠かせない存在として輝いています。
※図1~4は理化学研究所環境資源科学研究センターにて撮影