参考文献
- 長島 司, ビジュアルガイド 精油の科学 イラストで学ぶエッセンシャルオイルのサイエンス, フレグランスジャーナル社, 2012
精油の香気構成成分は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の組合せを基本として構成された「有機化合物」です。この「有機化合物」は分子内の繋がり方や炭素数によって、香りや特性が異なります。たとえば、リモネンやα-ピネン、リナロールといったテルペン類は、多くの葉、樹木、根、柑橘類の香気の中心となっており、重要な役割を果たしています。精油はこれらの成分が無数に組み合わさり、複雑な香りを生み出しています。
また、植物から抽出される精油の構成成分や香りは、産地や栽培環境によって異なることも報告されています。
図1. ゼラニウム精油の主要香気成分比較
今回、南阿蘇産ゼラニウム精油について、(Alpha MOS社製フラッシュGCノーズ Heracles II)を用いて分析を行い、精度の高い測定を実施しました。成分はクロマトグラムの各ピークの保持時間から同定(GC-MSにより別途マススペクトルも確認)し、得られたピーク面積値をと比較しました。
7種類の主要香気成分を比較したところ(図1)、ゼラニウム精油の主要香気成分の一つであるシトロネロールは南阿蘇産と他サンプル品において同等であったものの、南阿蘇産にはゲラニオール、リナロール、ギ酸ゲラニルなどが多く含まれ、特有の香りに寄与している可能性が明らかになりました。
さらに、超高速GC分析の結果を基に主成分分析を行った結果、南阿蘇産ゼラニウム精油と他サンプル品は、
グラフ上で異なる位置に配置され、香気特性が大きく異なることも示されています(図2)。
図2. 超高速GCの結果に基づく主成分分析(Loading plot)
精油のホリスティックな力には欠かせない香気成分。
今回、南阿蘇産ゼラニウム精油の香りの特性や構成する成分の違い、さらに香りを特徴づける成分を明らかにしました。
HRCでは、今後も精油の特性を探索していきます。