研究トピックス
2024.04.19

南阿蘇産ゼラニウム精油の香気成分による特性

HRCでは、精油のホリスティックな力や個性を日々探究しています。
今回、熊本県南阿蘇で栽培されたゼラニウムから抽出されたTHREEオリジナル「南阿蘇産ゼラニウム精油」の香りについて調査しました。
最新の装置を用いた香気成分の分析結果に基づく香りの特性をご紹介します。

  • 精油の香気構成成分とは

    精油の香気構成成分は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の組合せを基本として構成された「有機化合物」です。この「有機化合物」は分子内の繋がり方や炭素数によって、香りや特性が異なります。たとえば、リモネンやα-ピネン、リナロールといったテルペン類は、多くの葉、樹木、根、柑橘類の香気の中心となっており、重要な役割を果たしています。精油はこれらの成分が無数に組み合わさり、複雑な香りを生み出しています。
    また、植物から抽出される精油の構成成分や香りは、産地や栽培環境によって異なることも報告されています。

    南阿蘇産ゼラニウム精油の香気成分による特性
  • 南阿蘇産ゼラニウム精油の香気成分による特性

    図1. ゼラニウム精油の主要香気成分比較

    南阿蘇産ゼラニウム精油の成分分析

    今回、南阿蘇産ゼラニウム精油について、(Alpha MOS社製フラッシュGCノーズ Heracles II)を用いて分析を行い、精度の高い測定を実施しました。成分はクロマトグラムの各ピークの保持時間から同定(GC-MSにより別途マススペクトルも確認)し、得られたピーク面積値をと比較しました。
    7種類の主要香気成分を比較したところ(図1)、ゼラニウム精油の主要香気成分の一つであるシトロネロールは南阿蘇産と他サンプル品において同等であったものの、南阿蘇産にはゲラニオール、リナロール、ギ酸ゲラニルなどが多く含まれ、特有の香りに寄与している可能性が明らかになりました。

  • 南阿蘇産ゼラニウム精油の香りの特性

    さらに、超高速GC分析の結果を基に主成分分析を行った結果、南阿蘇産ゼラニウム精油と他サンプル品は、
    グラフ上で異なる位置に配置され、香気特性が大きく異なることも示されています(図2)。

    南阿蘇産ゼラニウム精油の香気成分による特性

    図2. 超高速GCの結果に基づく主成分分析(Loading plot)

  • さまざまな精油の香りの特性に期待

    精油のホリスティックな力には欠かせない香気成分。
    今回、南阿蘇産ゼラニウム精油の香りの特性や構成する成分の違い、さらに香りを特徴づける成分を明らかにしました。
    HRCでは、今後も精油の特性を探索していきます。

参考文献

長島 司, ビジュアルガイド 精油の科学 イラストで学ぶエッセンシャルオイルのサイエンス, フレグランスジャーナル社, 2012