水蒸気蒸留法

水蒸気蒸留法

水蒸気蒸留法とは、 原料の植物に含まれる香り成分を、沸騰させた蒸気の熱で抽出する方法です。

水と植物を同時に加熱しその蒸気を冷やすと、精油は水に溶けにくく、比重が異なる特性を持つことから、水と精油の2層に分かれます。水の部分は、わずかに香り成分が含まれることから芳香蒸留水(フローラルウォーター、ハーブウォーター)として使われます。

香り成分の沸点は水よりも高温ですが、水とともに加熱することで本来の沸点よりも低温(水の沸点程度)で気体にすることができます。

例)精油成分A(沸点200℃)を水蒸気蒸留する場合

98℃の時、水は大気圧よりもわずかに蒸気圧が低く、精油成分Aも大気圧より蒸気圧が低いため、どちらも沸点には達していません。

水蒸気蒸留法

精油成分Aを蒸留する時、98℃で水と精油成分Aの蒸気圧の合計値が大気圧と同じになると、水と精油成分Aが沸騰し気体になります。

水蒸気蒸留法

精油成分Aは本来の沸点よりも低い温度で抽出することが可能になりますが、100℃程度まで加熱されるため、熱により香りや成分が変化する成分は抽出することができません。

水蒸気蒸留法はその手段の違いにより以下の方法が知られています。

ウォーター・スチームディスティレーション

蒸留釜の下部に網を置き、網の上に植物、網の下に水をいれ、水を加熱し、蒸気を植物の間に通す蒸留方法。工業用から家庭用まで幅広く用いられます。

水蒸気蒸留法

スチームディスティレーション

蒸留釜とは別に蒸気を発生させ、蒸留釜の植物に熱した蒸気を流し込む蒸留方法。主に工業用で用いられます。

水蒸気蒸留法

ウォーターディスティレーション(煮だし蒸留)

植物が十分に水に浸かった状態で加熱を行う蒸留方法。木材や果皮など内部に香り成分が存在しているものから効率的に抽出する際に用いられます。

水蒸気蒸留法

コーホベーション(再蒸留)

一度得られた蒸留水を再度蒸留に使用する蒸留方法。蒸留水を使うことで、純度が高い精油を抽出する際に用いられます。

水蒸気蒸留法

減圧水蒸気蒸留

ウォーター・スチームディスティレーションの設備内を真空状態にして、沸点を下げて抽出する方法。高温では抽出が難しい香り成分を抽出する際に用いられます。

水蒸気蒸留法
参考文献
ジェニー・ハーディング,精油・植物油ハンドブック,東京堂出版,2010.
大槻真一郎/尾崎由紀子,ハーブ学名語源事典,東京堂出版,2009.
ジェニー・ハーディング,ハーブ図鑑,産調出版,2012.
フレディ・ゴズラン/グザビエ・フェルナンデス,調香師が語る香料植物の図鑑,原書房,2013.
三上杏平,エッセンシャルオイル総覧 改訂版,フレグランスジャーナル社,2010.
小倉謙,植物の事典 ,東京堂出版,昭和32年.
大橋信夫,メディカルハーブの事典 ,東京堂出版,2016年.
ワンダ・セラー, アロマテラピーのための84の精油, フレグランスジャーナル社,1992.
日本アロマ環境協会, AEAJアロマテラピー検定 公式テキスト1級・2級,世界文化社,1999.
ウォーターディスティレーション
http://apotheca.jugem.jp/?eid=2
http://gakuin.org/q/backnumber/2015/15/15.html
https://sara-green.info/contents_390.html
減圧水蒸気蒸留
https://www.seika.com/product/aroma/
協力
山本香料株式会社