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自然の恵みと人の想いが織りなす、南阿蘇のハーブづくり ー南阿蘇を「ハーブの聖地」へ 。ーVol.4
コラム
2023.09.01

自然の恵みと人の想いが織りなす、南阿蘇のハーブづくり
ー南阿蘇を「ハーブの聖地」へ。ーVol.4

私たちの生活に「あるといいな」と思うことの一つに、自分好みのいい香りや、安心して口にできるものがあることが一つ挙げられると思います。熊本県にある『クマモト敬和』は自社栽培の南阿蘇産ハーブを中心に、世界中から厳選したハーブ・野草の原料を取り扱い、ハーブティーや精油の製造に取り組んでいる会社です。このコラムでは、THREEが『クマモト敬和』と取り組む、南阿蘇でのハーブ作りやこだわりについてご紹介します。

宮野敬之(みやののりゆき)
Profile 宮野敬之(みやののりゆき)

『株式会社クマモト敬和』代表取締役社長。個人で製茶の販売を始め、2007年に法人化し『クマモト敬和』をスタート。翌年には法人化農業生産法人株式会社南阿蘇農園を設立。その後、販売店『南阿蘇TEAHOUSE』を全国各地に展開している。

工藤蘭(くどうらん)
Profile 工藤蘭(くどうらん)

『株式会社クマモト敬和』マーチャンダイザー/ブレンダー。商品の企画・開発や商品構成の決定、販売・サービスの計画立案などに関わる。

これまでそれぞれの立場でお話を伺いましたが、今回は宮野社長と工藤さんお二人にいくつかお伺いしたいと思います。南阿蘇ならではの『クマモト敬和』の取り組みをお聞かせください。

宮野 _ 「ゼロから良いものを作っていく」という思いを叶えるためにも、南阿蘇という場所はとても大切です。綺麗な水・澄んだ空気・豊かな土壌で、一貫したハーブ作りをすることで、香り高いハーブを作り出すことができています。今取り組んでいる農業はこれからもずっと続けていきたいと思っています。

工藤 _ 南阿蘇は2016年の熊本地震で被害を受け、その中でも被害の大きかった沢津野地区というエリアがあります。そこで地域の活性化を図る「早角会」という団体が立ち上がり、その方達と一緒にハーブを育てる活動もしています。地震後に国家事業で畑や道は綺麗に整地されたんですが、農業をしている人も少ないエリアで「さあ何を植える?」「誰がする?」状態だったんです。

宮野 _ そうそう。農業をする人もいなければ、育てるものも特になかったんですよ。そこでUXプロジェクトを通じて早角会の皆さんに、『クマモト敬和』はハーブをこういう風に育てたい・広めたいんですという説明会をしたんです。その流れで今年4月から試験栽培をやってもらっています。

工藤 _ 皆さん本業が別にある方たちなので、奥さまたちの反対もあるかもなと思っていたんですが、「ハーブ」というだけで女性は不思議と興味を示してくれているようで、皆さん楽しみながら取り組まれています。

宮野 _ 沢津野地区のように、畑はあるけど目的がなく、耕作放棄地になっている場所はたくさんあるんです。ただ、平均年齢が70歳といわれるこの南阿蘇で、その方達にハーブの栽培をというのはやはり現実的に厳しい。そうすると新しく農業をやりたいっていう人たちを呼び込まなければならない。そこの“吸引力”に私たちがなれればいいなと思ってます。

地域の方々と手を取り合いながら、楽しみながら農業ができるって、とても理想的ですね。それでは、現在課題に感じていることはありますか?

宮野 _ 事業を起こしてから現在までずっと抱えている課題は“人の理解”です。地域で事業をするということは、そこで暮らす人たちの理解あってこそだと思うんです。ただ、私たちみたいにハーブが好きという人たちだけが暮らしているわけではないのも確かなこと。また、恵まれた自然を私たちが壊すことなんてもってのほか。この事業を行う上で、誰かが泣いていたり苦しんでいたりということがあるのであれば、それはやる意味がないとも思っています。私たちが誠心誠意、南阿蘇のためになること、自分たちのためにもなることを、日々理解を深めながらやっていくことを念頭に置いて取り組んでいます。

工藤 _ これから自然を守る上で、サステナブルであることは不可欠だと思っています。ハーブを蒸留した残渣(濾過をした後に残ったかすのこと)を育てるための肥料にできないか、蒸留した残りの液体を使って何かできないかなど、そういうことを常に考えています。

宮野 _ 人材の確保も大きな課題です。私たちがハーブの圃場をどれだけ拡大したとしても、そこで畑を見るひとや苗を育てる人がいなければ成り立たない。でも村の過疎化は放っておけば進んでしまう。将来、他責的になるのを待つのではなく、私たちひとりひとりが南阿蘇の素晴らしさを伝えていき、興味を持ってもらえるよう努力すべきだと思っています。

自然の恵みと人の想いが織りなす、南阿蘇のハーブづくり ー南阿蘇を「ハーブの聖地」へ 。ーVol.4

お二人が思うハーブの魅力はどんなところですか?

宮野 _ まだまだこれから日本で広がるチャンスがあるところですね。大のコーヒー好きだった私が、ハーブティーをよく飲んでる時期はコーヒーを受け付けない体になったんですよ。

工藤 _ そんなことありましたね(笑)。実は私、元々はハーブが苦手だったんですよ。でもハーブティーを飲むことで、気持ちの切り替えができたり、身体が綺麗になったような気分になれるんですよね。

宮野 _ 「いかに長く働けるか」ということがCMでも謳われていた平成元年あたりは、どれだけ長く働けるかという社会風潮だったことから、カフェインが非常に強いコーヒーが求められていたんですよね。時代が変わって、体を酷使する働き方から、脳みそを動かすことが多い働き方にシフトチェンジしてきたんです。それに伴い、毎日しっかりとした睡眠と規則正しい生活が必要になったんです。そこで求められるのが、心の安定や脳の安らぎだと思うんですよね。そういう意味ではハーブというのは、世の中に必要なものだと思っています。

自然の恵みと人の想いが織りなす、南阿蘇のハーブづくり ー南阿蘇を「ハーブの聖地」へ 。ーVol.4

時代の流れも加担して、ますますハーブの需要は高まりそうですよね。他にもハーブの効果や効能について、感動したことや気づきなどはありましたか?

工藤 _ 自分の話ではないんですけど、たくさんお酒を飲んだ翌日の早朝にフレッシュハーブでティーを淹れて飲んだところ、二日酔いが途端に消えたという話を聞いたことがあります。リフレッシュ効果は間違いなくありますよね。

宮野 _ ハーブには身体が綺麗になる、頭がすっきりするというような効果があるイメージが非常に強いと思います。また、デスクワークが多いことや、家に閉じこもりがちな現代社会の人たちに 対して、リフレッシュや癒しという部分で起用するものだと思います。

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現在チャレンジしたいと思っているミッションなどはありますか?

宮野 _ ハーブのパワーを多方面で使っていただけるような開発をしていきたいと思っています。例えば、THREEと化粧品原料の共同開発に取り組んでいるように、飲み物などの食品だったり、空調の香りだったり。

工藤 _ ただ食品に使うとなると、安心・安全であるという最大のハードルがありますよね。

宮野 _ ハーブの香りがする飲める水をいつか南阿蘇の水で作ってみたいんですよ。そのためにも、近いうちに研究・開発して実現させたいと思っています。その他にも、ハーブをいろんな産業で使っていただけるようにすることが急務だと思っています。

今後のビジョンを教えてください。

宮野 _ 農業を“観光化”することができればいいなとも思っています。自慢できる素晴らしい自然と景観に囲まれて製品を作っているということを、多くの人に知っていただきたいんです。いずれは、南阿蘇の恵まれた環境で育てるハーブを多くの人に体験してもらえる場所を作りたいなと思っています。「南阿蘇=いい香り」というイメージを定着させて、南阿蘇が世界に認められるハーブの聖地といわれる未来を作っていきたいです。

工藤 _ ハーブといえば「ヨーロッパ」ではなく「日本の小さな南阿蘇という村」といわれるといいなと思います。日本に行ったら行ってみたい場所のひとつになりたいですね。

宮野 _ 私の力でできるかどうかは別として、素敵な田舎を残したいと思っています。

想像しただけでワクワクします。体験できる場所とは具体的にどういう場所になるんでしょうか?

宮野 _ 蒸留した精油を使い自分好みのフレグランスを作れるような体験や、ハーブ畑での農業体験やその野菜を使ったレストランなど、ハーブをテーマにした複合施設を考えています。想定としては2027年には実現したいですね。私の人生の中で最終的な事業だと思っていて、これに一生をかけても悔いはないと思っています。

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これからどんな事を大切に活動されていきますか?

宮野 _ 一番大切なことは誠実であることだと思うんです。「自分たちのやっていることが素晴らしいことなんだ」ということを大きな声で謳えるようになればいいなという風に思います。

工藤 _ 会社でやれることって限られると思うんです。ただいろんな企業と協力することで、社会や環境の役に立てることが増える。広く周りを見ながら地域と企業、大学などと手を取り合って前に進めていければと思っています。

宮野 _ そこの協力を得るためには、自分たちがまずやることだと思うので、これからも地域のこと、人のこと、未来のことを考えて日々活動していきます。

南阿蘇の好きなところ

Tips 南阿蘇の好きなところ

宮野 _ なんといっても景観です。空気が澄んでいるので、夕暮れに山が赤く染まっていく様子がとても綺麗で、何度見ても感動します。

 

工藤 _ 季節を山の色の移り変わりで感じることができるんです。自然を肌や目で直接感じられる場所って、実際少なくなってきていると思うので、貴重な場所だと感じています。

edit&interview 大塚淑子
photo 大塚淑子、他