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「もったいない」を「ありがとう」に、茶の実から始まる茶産業改革。ー日本の茶文化に新しい風を。茶の実が繋ぐ今と未来ー Vol.4
コラム
2023.04.28

「もったいない」を「ありがとう」に、茶の実から始まる茶産業改革。
ー日本の茶文化に新しい風を。茶の実が繋ぐ今と未来ーVol.4

私たちが日頃親しんでいるお茶。その茶の木にできる”茶の実”について、知っている人はあまり多くないかも知れません。それもそのはず、茶の実は美味しい茶葉を作るためには必要とされないことから、茶業者の間でも使用されず、一般の人の目に触れることはなかったのだそう。株式会社緑門の下山田力さんは、そんな無価値とされてきたもののポテンシャルに目を向け、耕作放棄地を使って栽培を広げています。このコラムでは全四回に渡り、茶の実や緑門の活動についてご紹介します。今回は、下山田さんが作り上げようとしている茶の実産業のこれからの未来についてお伺いしました。

下山田 力
Profile 下山田 力
株式会社緑門 代表取締役

茶の実の栽培から茶の実油の製造、ジェノベーゼなどの商品開発までを手掛ける株式会社緑門を創業。これまで茶産業で取り上げられることのなかった茶の実に着目し、耕作放棄地を再利用した栽培を全国で広げながら茶の実油づくりを普及している。また各地で生産に取組む有志と日本茶の実油協会を立ち上げ、茶の実の品質向上と市場の創出および、全国で茶の実油の生産者人口を増やす為に活動する。

これまでのお話の中でも、茶の実を栽培する際に活用している”耕作放棄地”は重要なキーワードとして登場してきました。耕作放棄地が増えているという現実について、下山田さんが感じている課題やミッションをお聞かせください。

全国には約40万ヘクタールもの耕作放棄地があります。その一部を茶の実畑として再活用耕作放棄地を活用して茶の実を栽培する生産者を増やすことが課題解決のキーになると思って活動しています。長年管理されていないままの畑もたくさんありますから、耕作放棄地を活かすにはまず初めに手入れが不可欠。出来れば茶の実も作れて、放棄地の解消にもなるので一石二鳥だなとずっと思っています。ただ手入れには人手が必要なので、冒頭にお伝えした活動に取組んでいるということです。元々耕作放棄地だった畑の再利用を含めて現時点で茶の実を栽培している畑は、全国に点在しているものを全て合わせて約20ヘクタールほどの面積。茶の実の生産者を増やして活用できる耕作放棄地を拡大し、様々なプロダクトや体験を通じて茶の実を楽しむことができるエリアを作るのが目標の1つですね。

茶の実に新たな可能性を見出した茶農家の方々や、興味を持ってくれた新たな担い手の協力のもと現在の茶の実産業が成り立っているとお話しされていましたが、これからはそのような新規参入者にはどんなサポートを行っていくお考えでしょう。

これからも僕が持っている知恵や知見をシェアしていくつもりです。茶の実油を安定的に供給できる体制を整えるためには、生産過程はもちろん、茶の実の魅力を普及していく点においても皆さんの協力が必要です。僕自身が茶の実を商品化してお客様に届けるまでのノウハウを、周りの方に力を貸していただき学んできました。新規参入者のなかで、茶の実油を活用して商品として展開していきたいと考えている方には、原量供給だけではなくアイディアの共有などでもサポートできるように連携していきます。

「もったいない」を「ありがとう」に、茶の実から始まる茶産業改革。ー日本の茶文化に新しい風を。茶の実が繋ぐ今と未来ー Vol.4

茶の実の持つ魅力を世の中に広げていくことにも注力しているのですね。下山田さんは日本茶の実油協会を発足し収穫イベントなども実施していますが、具体的にはどのような取り組みなのですか?

茶の実をもっと普及させたい、茶の実の担い手を応援したいという思いで、2年前から収穫イベントを行っています。そこで茶の実の魅力と可能性に引き込まれた皆さんと一緒に、2016年に日本茶の実油協会を立ち上げました。今まで培ってきた繋がりを活かして、年に1回は全国各地でイベントも続けていきたいと考えています。取り組みを始めた当初に比べれば、認知度も上がってきていますが、まだまだ茶の実を知らない方がたくさんいます。それでも関心を持ってイベントに足を運んでくださる方々もいて、その確かな魅力を実感します。収穫イベントは茶の実に魅力を感じている方々と話すことができる機会なので、本当に嬉しいですね。昨年は、THREEの方々にも茶の実の収穫にご協力頂きました。一生懸命に茶の実を拾い続ける姿に茶農家の方々も感激されていたのが印象に残っています。素材一つ一つから真摯に向き合う様子を知ることができて、茶の実への取り組みの活力にもなっています。

「もったいない」を「ありがとう」に、茶の実から始まる茶産業改革。ー日本の茶文化に新しい風を。茶の実が繋ぐ今と未来ー Vol.4

茶の実の未来に向けて挑戦を続けている最中だと思いますが、目標やゴールはありますか?

「もったいない」を「ありがとう」に、茶の実から始まる茶産業改革。ー日本の茶文化に新しい風を。茶の実が繋ぐ今と未来ー Vol.4

農業に携わっている方々のイメージを、茶の実産業から一新していきたいです。人々が生きるために口にする食べ物を作っているのは一次産業です。その担い手となっている農家の方々がいかに素晴らしいかを、茶の実を通して伝えていきたいと考えてこの活動を続けてきました。そのためには、茶の実を栽培していてよかったと思ってもらえるような仕組みを作っていくことが今の課題です。企業との協力により茶の実油をさまざまなプロダクトとしてお客様のお手元に届けることができます。そういった取り組みのなかで使ってよかったと感じてくれるお客様が増えて需要が高まれば、茶の実栽培の担い手もより一層やりがいを感じられると思うんです。そういう生産者が増えてくれるといいですね。
茶の実は、海外でも日本のカルチャーとして知られている”日本茶”の伝統的な魅力を再認識させ、新しいサイクルを生み出してくれると思います。今は茶の実の産地ごとに茶の実油を作り、生産できる産地を全国で拡大している段階。そうすることで人々が各産地のお茶を知るきっかけを作り、茶の実を茶産業全体の入口のような存在にしていきたいです。

edit&interview 平井莉生(FIUME Inc.)、text 庄司楓(FIUME Inc.)
photo LSスタジオ、他