左上:マツホドの子実体
左下:採取したマツホドの菌核(ブクリョウの原料)
右 :茯苓突きの様子
Tips 持続可能な社会へのヒントを学ぶ「茯苓(ブクリョウ)」
江戸時代には丹波や佐渡で採取されていたブクリョウ(茯苓)ですが、現在では日本国内での自給率は1%にも満たず、その大半を中国からの輸入に依存しています。独特の採取法「茯苓突き」は、培われた経験を必要とし、かつ重労働であるため、この技術を継承する人は時代とともに減少し、現在ではほとんど失われつつあります。
現在、城西大学 生薬学研究室では、ブクリョウの国内栽培を目指し、フィールドワークによる茯苓突きの実施や、遺伝子解析、子実体(キノコの本体で胞子を形成する部位)の形成について研究を行っており、薬用資源を持続的に利用していくための大切な一歩となっています。
通常、ブクリョウは外層を除いた菌核を薬用として用いますが、その外層「茯苓皮」も古来より薬効を有すると伝えられています。中国明代の本草書『本草綱目』では、茯苓皮は「水腫や皮膚のむくみを改善する」と記され、後漢の名医、華佗(かだ)が編纂したとされる『華氏中蔵経』では、五皮飲に配合され、皮水証(皮膚や皮下に水がたまってむくんでいる症状)の改善に用いられたことが述べられています。
このように輸入に依存している植物の国内栽培への挑戦や、一見すると利用価値が乏しい部分の有効活用は、現代の持続可能な社会づくりにもつながっています。



