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世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.4
コラム
2024.12.02

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。
ー食料を起点に循環する未来のためのアプローチーVol.4

国内のカロリーベース食料自給率は38%(※)と低く、ほとんどの食料を輸入に頼っている日本。住商フーズは、住友商事グループの食品開発、輸入、販売を行う商社として国と国の「食」の架け橋の役割を担っています。海外から輸入される食料が海を超えて私たちに届くまでには、製造や加工の過程でフードロスが生まれているのも事実。そこで住商フーズが力を入れているのが食品残渣に新たな付加価値を見出すアップサイクルです。vol.3とvol.4では、原料の生産現場と商品を作るメーカー、どちらの目線も汲み取る立場だからこそ感じる食料にまつわるアップサイクルの実態について、住商フーズの藤村さんと新沼さんに聞きました。

(※)参考:令和4年度 農林水産省の統計より
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

藤村岳史(ふじむら たかふみ)
Profile 藤村岳史(ふじむら たかふみ)

2017年に住商フーズ㈱に入社。新規商材の研究開発、プロセス開発、果汁、油脂、青果等の営業を経験したのち、2023年4月に新しくできた現在の「新規素材準備室」へ。食品残渣を活用したアップサイクル素材開発プロジェクトを主導。

新沼 美月(にいぬま みづき)
Profile 新沼 美月(にいぬま みづき)

2020年に住商フーズ㈱へ入社後、コーヒーの輸入・営業担当を務める。

サステナブルで高品質なコーヒーを増やすことを目指し、産地や国内のコーヒー関連事業者・認証機関と連携してコーヒートレードに限らない活動に取り組んでいる。

これまでいろいろお話をお伺いしてきて、私たちの食料も様々な課題を抱えていることがよく分かりました。少しでも食料を無駄にしないように取り組む企業も増えているということですが、生産地から私たちの手に渡るまでの間にはどのような廃棄される食材があるのでしょうか。

新沼

例えばケチャップやトマトペーストなどは私たちにも身近な商品ですが、加工の過程で皮や種は取り除いて捨てられてしまいます。トマトジュースを絞った後のカスも捨てられてしまう部分になりますね。これらをはじめ、商品を作る過程でどうしても出てしまう廃棄される食材や原料を他のものに活用できれば素晴らしいですね。

 

藤村

そういったものの活用以外でも、不足している食料に代わる代替食材の研究開発なども行っています。例えば今、実は世界的にタコの需要が伸びています。日本でもたこ焼きなどでお馴染みの食材ですが、価格もかなり高騰しているんです。そこで、動物性の原料に植物性の原料を混ぜてタコの弾力と味をつけたものを開発しました。同じように、貝柱のほぐれるような繊維まで忠実に再現したホタテ風かまぼこなどもあります。

 

新沼

需要に対して原料が不足すると、単価を上げざるを得なかったり、消費者にも影響が出てしまいます。安定して商品を届けるために、こうした代替原料を使用するところも増えているんです。今や私たちに馴染み深い「カニカマ」も、かつて日本人が開発した食材。それと同じ原理で、タコやホタテをはじめとした代替食品が一般的になる日も近いかもしれないですね。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.4

私たちも、もしかしたら知らず知らずのうちに代替食品を食べているのかもしれないですね。時代に合わせて、食料のあり方も変化しているのがよく分かります。
こうした食料の問題について、まだ自分ごととして捉えられていない人も多いと思いますが、住商フーズとしてどのようにアプローチしていきたいですか?

藤村

「考えさせない」仕組みを作ることが私たち現役世代の役割だと感じています。フェアトレードやバードフレンドリー、オーガニックなど、それが当たり前になっている風潮が必要ですよね。スーパーでそうした商品がごく自然に並んでいる環境を整えることで、みんながそれを自然に手に取り、評価される世の中を目指すように社会を変えていくことが必要だと思います。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.4

消費者にとっても“当たり前になる”ことが大事ですよね。そんな未来を実現するために、住商フーズとして取り組んでいきたいことや展望を教えてください。

藤村

一つの目標として、種子島で現在取り組んでいる完全循環型事業を構築をしたいと考えています。またこれから更なる社会課題が出てくると思うので、それらの一つの解決策となるような商品を生み出していきたいですね。そのために食品分野に限らず、幅広い分野の企業様と協力していくことが必要だと思っています。食べ物を出発点にするところは変わりませんが、例えば化粧品や化学品など、様々な形でアップサイクルに取り組んでいきたいですね。

 

新沼

「認証マークのことを知ってはいるけど金銭的に買えない」、「地球にやさしい商品を買ってはいるけどどのように還元されているのかは知らない」など、まだ私たちが踏み込める領域がたくさんあると感じています。そうした課題がある領域に、もっとアプローチしていきたいですね。自然と手に取ってしまうサステナブル商品を広げていきたいです。そのためには、生産国やロースター、日本で認証ラベルを管理している事業団体などと協力していくことが大事だと思います。

コーヒーの淹れ方による味の違い

Tips コーヒーの淹れ方による味の違い

コーヒーの美味しさは「原料」「焙煎」「抽出」の1/3ずつで味が決まると言われています。淹れ方さえ気をつければ、いつもより美味しいコーヒーを自宅でも飲めるので意識してみてください。

<お湯の温度>
高温(95℃くらい):苦味や渋味成分が効率的に抽出できます。
低温(85℃くらい):酸味の成分がより抽出されやすくなります。

 

<お湯の注ぎ方>
短時間でお湯を注ぎ切ると一気に抽出されスッキリと、時間をかけてお湯を注ぐとその逆で濃いめの味わいになります。 また、フィルターにお湯がかかると雑味が増してしまうので、豆に直接お湯を注ぐようにしましょう。

edit&interview 野沢愛也子(FIUME Inc.)
photo 植田翔