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世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.1
コラム
2024.06.03

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。
ー海を超えた食料が抱える問題と未知なる可能性ーVol.1

国内のカロリーベース食料自給率は38%(※)と低く、ほとんどの食料を輸入に頼っている日本。住商フーズは、住友商事グループの食品開発、輸入、販売を行う商社として国と国の「食」の架け橋の役割を担っています。海外から輸入される食料が海を超えて私たちに届くまでには、製造や加工の過程でフードロスが生まれているのも事実。そこで住商フーズが力を入れているのが食品残渣に新たな付加価値を見出すアップサイクルです。フードロスをはじめ輸入食料が抱える問題とは、そして私たちが何気なく飲んでいる1杯のコーヒーやひと匙の砂糖などの背景に、どのようなストーリーがあるのか。Vol.1では、フードロスの現状と開発の可能性について住商フーズ㈱新規素材準備室の藤村さんに話を聞きました。

(※)参考:令和4年度 農林水産省の統計より
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

藤村岳史(ふじむら たかふみ)
Profile 藤村岳史(ふじむら たかふみ)

2017年 住商フーズ㈱に入社。新規商材の研究開発、プロセス開発、果汁、油脂、青果等の営業を経験したのち、2023年4月に新しくできた現在の「新規素材準備室」へ。食品残渣を活用したアップサイクル素材開発プロジェクトを主導。

「WORLD FOOD CURATOR」として、世界中の食料と、食に関するさまざまな情報を収集・整理し、新たな価値を創造している住商フーズ。数ある商社の中でも、住商フーズが担っている役割を教えてください。

海外にある商品や農作物を日本に輸入したり、逆に日本の商品を海外に輸出して、国と国の橋渡しをするのが商社の役割です。住商フーズは主に食料を世界各国から輸入して、様々な製品の原料として国内のメーカー様や加工先様に供給しています。取り扱うのはお肉や野菜・果実加工品から油脂、お米、コーヒーなど多岐に渡り、アジア、ヨーロッパや北中南米など世界中の生産者様とお取引をしています。時には原産国まで出張して現地の農園に足を運び、生産者と密なコミュニケーションを取るのも私たちの役割となります。取り扱う商材は食料ですが、どんな思いで彼らがその作物を育てているのか、そしてどんな苦労があるのかという生産者の声、作り手の思い、夢やストーリーまでも素材と一緒に日本に持ち帰ってくる仕事をしています。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.1

まさに国と国を繋ぐ架け橋ですね。世界を股にかける仕事でありながら、各分野の専門性を求められることも多いと思います。藤村様は社内で何を担当されているのでしょうか。

私自身は、2023年4月に新しくできた新規素材準備室に在籍しています。ここは、コロナ禍が明けた後、世間で高まった環境やSDGsへの意識に対して、商社として何ができるか考えていく部署です。当社としてはバードフレンドリー®コーヒーなど、これまでも地球環境に配慮した商材を取り扱ってきましたが、今ある商材だけではなく、持続可能な社会のための新たな商材を開発していくことに主に取り組んでいます。例えば、当社の取扱い商品には果汁がありますが、ジュースの原料として果汁を絞った後には果皮が残ります。普通はそのまま廃棄されてしまいますが、柑橘類であればその果皮から抽出した精油が化粧品など別の分野でも役立つかもしれません。食品素材に限らず、他の企業様と手を取り合いながら幅広い分野で食品残渣をアップサイクルできないか探っているところです。

世界の生産地に直接足を運び、消費者に知られていない課題も多く発見してきたかと思います。そんな世界の食料状況をよく知る住商フーズから見て、世界の食料現場はどのような問題を抱えていますか。

食料は環境問題とかなり密接な関係にあります。地球温暖化が進むと、その作物を栽培できる地域が変化あるいは減反したり、熱波や干ばつといった自然災害の影響も直接収穫量という目に見える形で現れます。世界中と取引をしているからこそ、政治情勢によって今までの物流を確保することが難しくなり、流通が滞ることもあります。問題は様々ありますが、中でも特に問題視しているのが、食料を輸出入したり製品に加工する過程で生まれるフードロスです。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.1

フードロスに対する消費者の意識を実感することはありますか?

近年では消費者の意識も高まっていて、例えばスーパーでもコーヒーのフェアトレード認証やバードフレンドリー®認証(※)を目印に商品を選んだり、製造背景など生産の裏側まで意識を向ける方が増えていますよね。雑貨や衣服などでもリサイクル素材から作られた商品をあえて選択し、手に取る方もいらっしゃるかと思います。
環境問題は生産者や企業だけではなく、消費者個人にとっても重要な関心事になっていると感じています。

(※)
フェアトレード認証

社会的、環境的、経済的基準について定めた国際フェアトレード基準を満たしている証となる、世界的に最も認知されている倫理的ラベルの一つ。フェアトレード製品を購入することは、小規模生産者と労働者の生活とコミュニティを改善することにつながります。

バードフレンドリー®認証
渡り鳥の中継地となるコーヒー生産地域で、渡り鳥の休息地となる森林の保護とコーヒー栽培を両立できる生産方法を広めることを目的に1999年にアメリカのスミソニアン渡り鳥センターで立ち上げられた認証プログラム。渡り鳥の休息地となる原生林を保持しつつ、有機農業でコーヒーを栽培する農園に付与される。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.1

フードロスに対する意識は消費者でも高まっていると思いますが、消費者からは見えにくい課題もまだあるのではないでしょうか。

例えば意外と知られていないところでいえば、仮想水という問題があります。仮想水とは食料の消費国において、仮にその食料、たとえば農産物・畜産物を生産するとした場合、必要となる水の量を指します。消費国は生産に必要な分だけの自国の水を使用しなくてすむわけですから、農産物・畜産物を輸出入することはある国の水資源を輸出入していると捉えることができます※。日本は自給率が低いために世界中から大量に食料を輸入していますが、その結果仮想水の輸入も増え、その量は世界でも上位と言われています。この仮想水という考え方は未来に国家間の水資源を巡る争点になるのではないかとも考えられていて、食料を輸入するときにいかに削減できるかということも今後考えていかなければならなくなるやもしれません。アップサイクル素材の観点からも、できるだけフードロスが発生する現地で乾燥させて水分を減らしてから運ぶなど、水資源への取り組みは重要視されていくと思います。
(※)参考:環境省/
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/

目に見えるフードロスと違って仮想水は潜在的な問題なのでまだ世間一般の認知度は低いかもしれませんね。食料のフードロス問題の解決に向けて、現在住商フーズ独自で取り組んでいることがあれば教えてください。

住商フーズは、サトウキビの生産の北限地に位置する種子島に事業会社を持っており、そこでお砂糖の原料となる原料糖を作っています。種子島では、島内の耕作面積の約3割、農家の約6割がサトウキビ栽培に関わっているほどサトウキビは重要な基幹作物です。製品の製造過程で生成される副産物や残渣を堆肥やボイラー燃料として工場内外で有効活用したり、排水や排気に有害物質が含まれないよう適切な処理を行うなど、地球環境への配慮にも最善を尽くしています。

また残渣から香料を開発するなどの試みなどもしています。こうした取り組みを通じて、農業、製造、エネルギー再生のすべてがいつか島内で完全に完結した完全循環型ビジネスになるように、研究や取り組みを続けているところです。
また、日本はニンジンジュースの消費量が世界でも有数であることを知っていますか。当社は南半球最大のニンジン汁搾汁工場をニュージーランドに有しており、皆様の毎日の健康を陰ながら支えております。日本よりも環境への取り組みが先進的なニュージーランドの現地工場において、生産のエネルギー源となる石炭をウッドチップへ切り替え、加工過程におけるCO₂排出量の大幅削減を実現しております。健康にも地球にもやさしい原料の提供を目指し、挑戦を続けています。

捨ててしまうその前に!果物の果皮を活用したフレーバーティーの作り方

Tips 捨ててしまうその前に!果物の果皮を活用したフレーバーティーの作り方

煎茶や紅茶を淹れる際、柑橘類の皮を茶葉と合わせて淹れてみてください。お茶を低温で抽出すれば、低温抽出により柑橘のフルーティーな香りを壊さずに楽しめます。

 

<夏にぴったり!爽やかなフルーツティーのレシピ>

 

材料(約2人分)
リンゴ   1/4個~  お好みで
オレンジ  1/2個~  お好みで
※レモン等でも代用可
ブラウンシュガー   少々
※黒糖などでも代用可
剥いたオレンジの皮
紅茶 スプーン2杯
水  300ml
お好みのフルーツジュース 100ml
氷 適量

 

作り方

1.リンゴは1cm角、オレンジは皮を剥いて果肉を取り出す。
2.フライパンにリンゴとブラウンシュガーを加えて弱火で照りがでるまで軽く炒め、冷やして余熱をとる。
3.剥いたオレンジの外皮は1cm角程度に刻み、ティーバックへ詰める。
4.鍋にお好みのフルーツジュースと水を入れて火にかけ、紅茶の茶葉、3.を加えて好みの濃さに煮だしたら漉して冷ます。
5.グラスに1.のオレンジ果肉、2.のリンゴと氷を入れ、4.の紅茶を注ぐ。

edit&interview 野沢愛也子(FIUME Inc.)
photo 植田翔、他