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季節とともに移ろう心身に、精油の一滴を。ーVol.3
コラム
2023.12.01

季節とともに移ろう心身に、精油の一滴を。
ー精油の香りが蓋をした心を開く鍵になるーVol.3

スキンケアやフレグランスなど、私たちの身の回りのアイテムによく使われている精油(エッセンシャルオイル)。香りで身も心も癒してくれるホリスティックアイテム、となんとなく認識しているものの、特徴や効果について深く知らない人は多いのではないでしょうか。このコラムでは、精油をよく知る二人のセラピストをゲストに迎え、魅力や取り入れ方のコツを紹介していきます。

今回お話をお伺いしたのは アロマクラフトサロンや精油に関するテラピーの資格講座の講師を務めている箕輪三香さん。主催するサロンに集まる生徒とのコミュニケーションを通じて彼女が気付かされたという、精油の持つ役割について話を聞きました。

箕輪三香(みのわみか)
Profile 箕輪三香(みのわみか)

港区高輪の自宅サロンでアロマのクラフトサロン「Aromatise」を主宰。

プライベートでは二児の母。AEAJアロマインストラクター・アロマブレンドデザイナー・アドバイザーの資格を活かし、香りや精油を日常に取り入れられるようなワークショップやレッスンを開催したり、商品開発などにも携わっている。また、「ライブラ香りの学校 渋谷校」の代表も務め、アロマテラピーの資格を取得できる講座も開催している。

主に講師としてアロマやブレンドについて教えている箕輪さんですが、具体的な活動内容について教えてください。

2019年から高輪でアロマクラフトサロン「Aromatise」を主催し、好きな香りをブレンドしてオリジナルのミストやバスソルト、ハンドクリーム等を作ってもらう体験を提供しています。「忙しい毎日を送っている方々に、日常に香りを取り入れ、気軽に気分転換をしてもらえたら」という思いで始めたサロンのコンセプトは、「香りで世界を優しくする」。また、2023年3月に開校し、代表を務めている「ライブラ香りの学校 渋谷校」では、公益社団法人AEAJの資格が取れるアロマテラピーの資格を取得できる講座やOEMの調香などを担当しています。

高輪のサロンを始めてから、もう4年目になるのですね。どんな方々が、サロンに参加しているのでしょうか。

子育て中の母親や主婦が多く、他にもアロマテラピーに興味がある学生や、60代の方まで幅広く参加してくれています。5〜8人で開催しているレッスンですが、その日の気分に合わせてブレンドした香りを生徒さん同士が「いい香り!」と盛り上がっていたり、仲良くなっている姿を見ると、こちらまで嬉しくなります。精油を集めるのはお金がかかるし、たくさんの種類から自分好みにブレンドするのはなかなか難しいこと。それを気軽に体験できるのがサロンの魅力だと思っています。

和気藹々としていてすごく楽しそうな雰囲気なのがよく伝わってきます。優しく教えてくれる箕輪さんの人柄もあって、また参加したいと思う生徒さんも多いのではないでしょうか。

参加者はリピーターさんが多い印象です。一度来て、アロマテラピーの良さを知り、また参加してくださいます。私が講師を務める外部の講座をきっかけに興味を持ち、新規でサロンに来てくれる方も増えてきました。ですが、日々忙しい中わざわざ時間を作ってまで、私たちのようなサロンに行き着くこと自体がまだ少ない。既存の商品を買ったほうが早いじゃないですか。それでも、天然精油を使い、その日の気分に合わせてオリジナルで香りを作る事が身体に良かったり、足を運ぶその時間に価値があると思ってもらえる様に、外部での講座も積極的に開催し、アロマテラピーの奥深さが伝わるような話をしています。アロマに興味がない方の興味を引く企画を考える様な工夫もしています。最近だと、大人だけでなく、お子様と参加できるレッスンも人気です。理科の実験の様にバスボム作りをして、重曹やクエン酸の反応を見たり、アロマサシェを作りながら、お花のアレンジと香りを楽しんだり。香りだけに固執せず、ハンドメイドの楽しさと組み合わせると、親御さんも教育の一環として参加出来るので、喜ばれます。最近は犬向けのアロマテラピー講座も開催したりと、切り口は沢山あります。まずは知ってもらい、精油の良さに気付いてもらえたらいいなと考えています。

季節とともに移ろう心身に、精油の一滴を。ーVol.3

箕輪さんがサロンで生徒さんに教える上で大事にしていることはありますか。

忙しい中貴重な時間を使って来てくれているので、日常の色々な出来事を笑い飛ばせる様な明るい空間である事と、アロマテラピーの注意事項を間違えないようにするくらいです。どんな香りを作っても否定はしません。上手く作れる様なアドバイスはしますが、香り作りは自由ですし、個性なので何でも有りです。私のサロンには、アロマテラピーを本業にしようと思って学んでいる方は少なくて、趣味や息抜きなど、サードプレイス的に使ってくれる方が多いんですよね。会社でも学校でもない、香り好きが集まる場みたいになっています。何回も通っているうちに他では言えない悩みや、びっくり話を安心して話してくれるようになり。精油の香りが心を開くきっかけになっている気がしていて、嬉しいです。何回か来ているうちに、自然と周りにアロマ好きが増え、実践的な学びも深め、いつしか資格も取りたいと思ってくれるのが理想です。

ただ「教える、教えてもらう」の関係になるのではなくて、精油を通じた深いコミュニケーションが生まれているのがとても素敵です。箕輪さんは何がきっかけでアロマに興味をもつようになったのでしょうか。

元々香水やボディクリームなどが好きで、海外の強い香りの香水もよくつけていたし、部屋の香りにもこだわりがあったのですが、妊娠したのをきっかけに人工的な香りを受けつけなくなってしまったんです。でも、無臭なのは自分的にはナンセンスで、色々と調べる中で行き着いたのが、天然精油のナチュラルな香りでした。透明感があり、香っていて心地良いんです。季節や体調の変化、ホルモン周期の変化などで自分に合う香りは変わるもの。サロンでも、「この生徒さん、いつもと違う香りを好んでいるな。体調に何かあったのかな」と思って話を聞いてみると、やはり生理中だったり体調が悪かったりとか、そういった悩みを抱えていることが多い。天然精油の香りはそのような悩みにもアプローチしてくれます。

生徒さんの細かい変化にも気づけるのは、距離の近さならではですよね。今のお仕事のやりがいはどんなところに感じていますか。

レッスン後に「また来たいです。」と言ってもらえるだけで、講師としてはとても嬉しいです。精油の魅力が一人でも多くの人に伝わっているんだなと。また卒業生が学んだ事を活かして活躍している姿を見ると、やりがいを感じます。私はサロンや講義の他に、精油を使った商品開発にも携わっているのですが、自分がブレンドした商品をお客様が気に入ってくれ、何度もリピートしてくださったり、「これを使うと夜本当によく眠れるんです。」と生徒さんが周りに勧めてくれているのを見ると、自分の香りが認められ、広まっていくような気がして光栄です。

季節とともに移ろう心身に、精油の一滴を。ーVol.3
季節とともに移ろう心身に、精油の一滴を。ーVol.3

仕事をする中で、精油に対する新しい知識やトレンドをどのようにアップデートしているのでしょうか。

同業者の先輩や、他の先生とお話をして情報交換をする事もありますが、実は生徒さんの方がトレンドに敏感で、他社の新商品に詳しかったりするので、逆に教わることが多いです。お洒落に敏感な生徒さんの情報と、私たちの様な実践的な知識を持つ人の考えを組み合わせる事で良い相乗効果が生まれると思います。また、私は香りと芸術は近いと思っていて、別になくても困らないけど、あると自分が底上げされるような、良い状態に持っていけるような心地良い物なので、積極的に美術館に行ってみたり、旅先で新たな経験をしたり、良い音楽を聞いたりと、自分の五感を磨いておくと、自然と自分が研ぎ澄まされ、講師としても成長できると思います。また、参考書などを読むより、精油の原料となる植物を見に行ったり、誰がどの様な想いで育てているのかを聞いたり、蒸留所に行き自分で蒸留してみると、益々精油の魅力に気付きます。夏にフランスのプロヴァンスにあるラベンダー街道に行った時には鳥肌がたちました。たくさんの人と出会い、自分の目と鼻で実際に確かめていきたいと思っています。

わたしが好きな精油

Tips わたしが好きな精油

好きな香りは体調や季節によって変わるものですが、最近一番好きなのがフランキンセンス。大きく息を吸い込みたくなるようなゆったりと落ち着いた香りが、緊張してこわばった体をリラックスさせてくれます。

edit&interview 野沢愛也子(FIUME Inc.)
photo 植田翔