研究成果
2026.07.15

茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果

THREE ホリスティックリサーチセンター(HRC)では、植物や精油、心・からだ・肌にまつわるホリスティックな力を日々探究しています。
今回は、茶の実油の成分と効果についてご紹介します。

  • 茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果

    茶の実油について

    茶の実油はチャノキ(Camellia sinensis)の種子を絞ることで得られる揮発性の低い油です。同じ植物でもお茶の葉に関しては様々な研究が行われてきた一方で、茶の実に関する効果や作用については研究があまり進んでいません。 そこで今回、その成分と作用について調べました。

    リンク:茶の実の呼称と品種ごとの特徴

  • 成分比較

    茶の実油にはビタミンE(トコフェロール)や脂肪酸が含まれることがわかっていることから、これらの成分について他の植物油と比較しました。比較対照として選んだのは植物油としてよく知られているオリーブ油と、チャノキと同じツバキ科ツバキ属に属するツバキ油です。ビタミンEの含有濃度を比較したところ、茶の実油の濃度はツバキ油に対して有意に高いことがわかりました(図1)。また、主要な脂肪酸の組成を比較したところ、オリーブ油とツバキ油どちらに対してもパルミチン酸とリノール酸の比率が高く、オレイン酸の比率が有意に低いことがわかりました (図2)。これらの脂肪酸は皮脂を構成する成分でもあり、その中でもリノール酸は角質層のラメラ構造を支えるアシルセラミドの構成成分として皮膚のバリア機能維持に関わる成分です。

    茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果

    図1 ビタミンE濃度

    試験方法:高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
    THREE ホリスティックリサーチセンター調べ

    茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果

    図2 脂肪酸組成

    試験方法:ガスクロマトグラフィーにより分析し、検出された全脂肪酸に対する組成比を求めた。なお、グラフにはそのうちの4種を抜粋して掲載。
    THREE ホリスティックリサーチセンター調べ

  • 創傷治癒に関する効果

    ビタミンEは油脂の抗酸化作用を有することが広く知られていますが、実は創傷治癒に関与することも報告されています。 そこで、ビタミンEを豊富に含む茶の実油の創傷治癒に関する効果を調べました。
    ヒト表皮角化細胞を用いて細胞遊走試験を行ったところ、茶の実油を添加した際に有意に細胞遊走が亢進されました(図3)。細胞遊走とは傷口を塞ぐために細胞が移動する現象であり、創傷治癒の初期段階で起こります。この初期プロセスが活性化されたことから、茶の実油が創傷治癒を促進する作用をもつ可能性が示唆されました。

    茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果 茶の実油の成分と創傷治癒に関する効果

    図3 細胞遊走
    上:0%濃度添加時に対する細胞遊走度
    下:細胞遊走像(ギャップ領域)

    試験方法:正常ヒト表皮角化細胞を用いてGap Closer法により培地中央の空隙率を評価した。茶の実油なしをコントロールとした。蛍光が多いほど細胞遊走が亢進されたことを示す。
    THREE ホリスティックリサーチセンター調べ

  • 今回の結果から、これまであまり注目されてこなかった「茶の実油」が特有の成分特性を持ち、肌の創傷治癒をサポートする可能性を秘めていることがわかりました。 今後もHRCでは植物成分に関する研究を続けていきます。

参考文献

徳江ら, 日本栄養・食糧学会誌 42(1), 71-77, 1989
Zeng, Journal of Oleo Science 68 (7), 649-658, 2019
Hobson, International Wound Journal 13, 331-335, 2016