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世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.3
コラム
2024.10.01

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。
ー食の枠を超えて消費者に届くアップサイクルーVol.3

国内のカロリーベース食料自給率は38%(※)と低く、ほとんどの食料を輸入に頼っている日本。住商フーズは、住友商事グループの食品開発、輸入、販売を行う商社として国と国の「食」の架け橋の役割を担っています。海外から輸入される食料が海を超えて私たちに届くまでには、製造や加工の過程でフードロスが生まれているのも事実。そこで住商フーズが力を入れているのが食品残渣に新たな付加価値を見出すアップサイクルです。vol.3とvol.4では、原料の生産現場と商品を作るメーカー、どちらの目線も汲み取る立場だからこそ感じる食料にまつわるアップサイクルの実態について、住商フーズの藤村さんと新沼さんに聞きました。

(※)参考:令和4年度 農林水産省の統計より
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

藤村岳史(ふじむら たかふみ)
Profile 藤村岳史(ふじむら たかふみ)

2017年に住商フーズ㈱に入社。新規商材の研究開発、プロセス開発、果汁、油脂、青果等の営業を経験したのち、2023年4月に新しくできた現在の「新規素材準備室」へ。食品残渣を活用したアップサイクル素材開発プロジェクトを主導。

新沼 美月(にいぬま みづき)
Profile 新沼 美月(にいぬま みづき)

2020年に住商フーズ㈱へ入社後、コーヒーの輸入・営業担当を務める。

サステナブルで高品質なコーヒーを増やすことを目指し、産地や国内のコーヒー関連事業者・認証機関と連携してコーヒートレードに限らない活動に取り組んでいる。

近年は特に、フードロスに対する意識が消費者目線でも高まっているように感じます。お二人は、様々な取り組みをする中で原料の生産地と商品を作り出す企業やメーカー間でそれを実感することはありますか。

藤村

これまでに比べて、メーカーや企業といった消費者により近いところにいる方々も産地と繋がり、貢献したいという思いを持つようになったと感じています。食料の取引をする中でさまざまな企業様から「生産地で出た加工残渣や規格外品を商品にも使わせてもらえないですか?」「残渣を調達してもらえないですか?」と聞かれることもよくあります。

 

新沼

消費者も、商品にトレーサビリティが担保されているもの、認証マークがついているもの、生産地にきちんと価値が還元されるものなどを意識的に選ぶ人が増えていますよね。生産地、メーカー、消費者はそれぞれの現状を実際に見ているわけではないので、間に入る私たちがそのギャップを埋められるようになれたらと思っています。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.3

住商フーズのように間に入って目には見えない実態を伝えてくれる存在があるのは大きいですよね。同じ社内でも藤村さんと新沼さんは担当する領域が違いますが、社内で、あるいは関連事業会社との間で異なる分野間だからこそ生まれる相互作用はありますか。

藤村

社内に色々な部署があり、世界中の多岐にわたる商材を取り扱っているのは大きな強みだと感じています。メーカーにコーヒーを売りに行った先で砂糖の話になって「砂糖もオーガニックのものが欲しいんです」という要望を拾うこともあります。さらに、本社の方から「アメリカのシリコンバレーのスタートアップ企業が最先端の技術でこんなアップサイクルに挑戦しているみたいだけど興味ある?」というような情報を頂くこともあります。系列企業なども含め異分野、多方面から情報が集まってくるので、部署間や担当者の間でも積極的に情報の交換をするようにしています。

 

新沼

例えばコーヒーを生産する過程で捨てられている部分は、有機肥料として現地で二次利用することもありますが、日本に持ち帰ってくれば我々を介して何か食品として販売できるかもしれない。それが食料以外の分野で、例えば化粧品の原料などに利用できないか、住友商事グループ内で連携してバイオマスの原料に使えないかなど、住商フーズの他にも色々な事業会社があるからこそ生まれるアイデアは、出張で現地へ行くたびに何かしら生まれています。

 

藤村

住商フーズ独自のラボはまだないので、残渣の活用方法の研究は企業との取り組みが基本になります。具体的なところでは、弊社はジュースを色々なメーカーにご納品しているので、野菜やフルーツ関連の残渣の活用方法を研究することが多いです。そうした研究から、植物色素や繊維、ポリフェノールなどの有効成分や香りなど、他分野の素材への活かし方を検討しているところです。

私たちを取り巻く食品も、様々な企業が手を取り合って少しでも無駄にならないように進化しているのがよくわかりました。お二人は、近年の消費者のフードロス、そして食への意識についてはどのように感じていますか。

新沼

個人的には、忙しくて時間がない現代人は、時間をかけて美味しいものを味わうというよりも、短い時間で手軽に栄養を摂る効率化を求めている人も一定数いるなと感じています。それは食料を扱う立場としてはとても悲しいこと。まずはゆっくり食材を味わって「食ってこんなに奥深いものなんだ」と感じてもらうことが第一歩なのかなと感じています。

 

藤村

私は、食事はアクティビティだと捉えています。外食の多い方は、イベント感覚で自炊する時間を取られることをお勧めします。一から調理をすると、実際どんなところが食べられない部分として捨てられているのか、勿体ないので工夫してたべられないか、目に見えるフードロスに気づけるはずです。食物一つでも、「育てる」「収穫する」「選ぶ」「調理する」「味わう」「誰かに伝える」と、様々な楽しみ方ができます。特に近年は「誰かに伝える」ということが非常に簡単になりました。是非、消費者である皆さんに食について語ってもらいたいです。そして、そのためには自らが楽しい体験をすることが一番だと思っています。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.3
自宅で食料を余すことなく活用する方法

Tips 自宅で食料を余すことなく活用する方法

<エノキ>

石づき部分は、実はカットするのは下から1cm程度でOK。うまみがギュッとつまった石づき部分は、ほたての貝柱のような食感なので、バターでソテーするだけでとても美味しい一品になります。

 

<ブロッコリー>

房を切り分けた後に残る芯には、栄養がたっぷり詰まっています。厚めに皮を剥いたら短冊切りにしてスープなどに入れると美味しく食べられます。

 

<グレープフルーツなどの厚い柑橘の皮>

香りが豊かな柑橘の果皮は煮詰めて砂糖をまぶせば、砂糖漬けのおやつになります。鹿児島の郷土料理には文旦漬けという菓子があります。

 

<野菜のくず>

ぬか床の発酵に使用されている人が多いかもしれませんが、その他にも土や米糠、枯葉と混ぜて家庭菜園や花壇の肥料として使用することも可能です。

edit&interview 野沢愛也子(FIUME Inc.)
photo 植田翔