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世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.2
コラム
2024.08.01

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。
ー消費者と生産者を繋ぐ、持続可能なコーヒーの未来ーVol.2

国内のカロリーベース食料自給率は38%(※)と低く、ほとんどの食料を輸入に頼っている日本。住商フーズは、住友商事グループの食品開発、輸入、販売を行う商社として国と国の「食」の架け橋の役割を担っています。海外から輸入される食料が海を超えて私たちに届くまでには、製造や加工の過程でフードロスが生まれているのも事実。そこで住商フーズが力を入れているのが食品残渣に新たな付加価値を見出すアップサイクルです。vol.2で話を聞いたのは、数ある商材の中でコーヒーを担当する住商フーズの新沼美月さん。コーヒーの需要が年々上がる一方で、取り巻く問題について知らない人が多いのも事実。消費者と生産者の両方の声を捉えられる立場として、コーヒーの現状と私たちにできることを聞きました。

(※)参考:令和4年度 農林水産省の統計より
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

新沼 美月(にいぬま みづき)
Profile 新沼 美月(にいぬま みづき)

早稲田大学政治経済学部卒業。2020年に住商フーズ㈱へ入社後、コーヒーの輸入・営業担当を務める。

サステナブルで高品質なコーヒーを増やすことを目指し、産地や国内のコーヒー関連事業者・認証機関と連携してコーヒートレードに限らない活動に取り組んでいる。

お米や青果など多岐にわたる住商フーズの取り扱い商材の中で、新沼さんが担当しているのがコーヒー。まず、コーヒーを輸入するために具体的にどのようなことをしているのか教えてください。

世界のコーヒー農園から商品を買い付け日本に持ってくるのが主な仕事内容です。時には中南米やアフリカなど世界各地の農園まで直接行き、生産者と話をしたり、農園や地域の様子を見学したりもします。コーヒーはほぼ全てが海外産のため、その背景や生産過程についてはよく知らないという消費者は日本に多いです。品質の良いものを探すだけではなく、農園の生の声を汲みとりながら、消費者に当たり前に選ばれるサステナブルな商品をもっと広めていきたいという思いで取り組んでいます。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.2

住商フーズがコーヒーを取り巻く問題にも積極的に働きかけているのは、新沼さんのように一つの商材を通してより大きな問題にアプローチしたいという意識があったからなのですね。住商フーズが特に注目しているコーヒーの問題はどのようなものがありますか。

自然の実りとして中南米やアフリカの森の中で自生していた「コーヒーノキ」は、コーヒー文化が世界中に広まるとともに、産業となって農園で効率よく生産されるようになりました。その結果、生産量や種類は格段に増えた一方、環境への負荷が少なからず生じているという課題があります。また、地球温暖化や農園の劣悪な労働環境などさまざまな問題によって、2050年にはコーヒーの栽培適地が現在の50%程度になってしまうと問題視されている「コーヒー2050年問題」も最近注目されていますね。

今や当たり前の嗜好品であるコーヒーが簡単に飲めなくなる可能性があるのですね。渡り鳥を守るための「バードフレンドリー®認証」のコーヒーを住商フーズが取り扱うようになったのは何がきっかけだったのでしょうか。

約20年前、当時の担当者がアメリカに行った際に「バードフレンドリー®認証」(※)の存在を知り、日本でも注目するべきと持ち帰ってきたのがきっかけです。今もまだフェアトレードほど馴染みのある認証ではありませんが、当時は今よりもっと知られていなかったと聞いています。生産者に現状をヒアリングして、消費者も巻き込めるように現在のように商品として取り扱うようになりました。

(※)バードフレンドリー®認証
渡り鳥の中継地となるコーヒー生産地域で、渡り鳥の休息地となる森林の保護とコーヒー栽培を両立できる生産方法を広めることを目的に1999年にアメリカのスミソニアン渡り鳥センターで立ち上げられた認証プログラム。渡り鳥の休息地となる原生林を保持しつつ、有機農業でコーヒーを栽培する農園に付与される。2005年より、日本でも販売開始。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.2

実情をよく知る現地の人に直接話を聞けるのは住商フーズならではの強みだと思います。「バードフレンドリー®コーヒー」の他に取り扱いのあるエシカルなコーヒーがあれば教えてください。

働く女性の自立支援、社会的地位の向上、経済的環境の改善を目的とした「ウーマンズハンドプログラム認証」のコーヒーも輸入しています。これは、グアテマラのアソバグリ農協が女性生産者のサポートを目的として始めたプログラム。販売による収益の一部は奨学金制度や生活環境改善など、女性たちの自立への懸け橋になるよう還元されています。住商フーズもこの理念に賛同し、日本での取り扱いを決めました。この他にも、有機栽培のオーガニックコーヒーなどサステナブルな種類も積極的に取り扱っています。

世界中の食材が、余すことなく活用される資源になるまで。ーVol.2

スーパーなどでは焙煎されてパッケージングされた状態の商品が並ぶため、コーヒー豆が実際にどのように収穫されているのか知らない消費者も多いと思います。コーヒー豆の収穫方法、そしてそこで生まれる残渣について教えてください。

コーヒー豆は、コーヒーノキになるさくらんぼのような真っ赤な実(コーヒーチェリー)から取れます。中には果肉と種子が入っていて、その種子がいわゆるコーヒー豆です。コーヒーチェリーの状態だと長く保存ができず腐敗し始めてしまうため、現地で種子のみを取り出して生豆として輸入しますが、種子を取り出した後の果実の部分は有機肥料として活用している国もあれば丸ごと捨てている国も。でも捨ててしまっている国のほとんどが、肥料として二次利用する方法を単純に知らない場合が多いんです。複数の国と繋がりがある私たちが橋渡し役となって、残渣の活用方法も提案するようにしています。

物理的な距離があると届くべき情報も届かないのですね。新沼さんは、コーヒーに限らず海を超えて日本に届く食料への消費者の意識がどのように変わっていると感じていますか。また食料を扱う住商フーズとしての展望はありますか。

消費者だけでなく、私たちが輸入してきた原料をもとに製品を作るメーカーなど、現場を知らない人たちも直接産地に貢献したいという思いをより強く持つようになってきているのを実感しています。私たちは産地と消費者の両方を見れる立場なので、一杯のコーヒーがどのように未来に貢献しているのか、より明確にしていけるような取り組みをしていきたいですね。住商フーズはコーヒーだけではなく取り扱う食料も幅広く、社内にも色々な部署があるので、垣根を超えて情報を交換し、培ってきた知見を活かしていきたいです。フードに限定せず、化粧品や日用品など異なる分野の事業会社とも連携して廃棄せざるを得ない副産物をどうにか次に繋げられるように取り組んでいるところです。

消費者には見えていない未利用の資源に、食品に限らず無限の可能性があると思うと夢が広がりますね。消費者である私たちがまずできることはありますか。

コーヒーにまつわる認証の認知度は、日本ではまだまだ低いと言われています。「フェアトレード認証」は小学校の教科書でも紹介されているため比較的認知度が高いのですが、「バードフレンドリー®認証」や「ウーマンズハンドプログラム認証」、「レインフォレスト・アライアンス認証」(※)などそれ以外の認証があることすら知らない人が多いのが現状です。まずはコーヒーに多くの認証マークがあるということだけでも覚えてもらいたいですね。スーパーで豆を選ぶときに、見覚えのある認証マークがあるだけで、その商品の背景にも意識を向けるきっかけになるはずです。

(※)レインフォレスト・アライアンス認証
然資源や生物多様性の保全、生産者の人権や労働条件の保証などの厳しい基準を満たした農園に与えられる認証。

家でできる!コーヒーかすの活用方法

Tips 家でできる!コーヒーかすの活用方法

コーヒーを淹れたあとのかすには消臭効果があります。
下記のように消臭剤として利用してみてください。

 

・メッシュの出汁パックなどに入れて乾燥させ、靴箱の消臭剤に。
・ペーパーフィルターのまま三角コーナーに置き、シンクの消臭剤に。

edit&interview 野沢愛也子(FIUME Inc.)
photo 植田翔