匂いの嗜好性
匂いの感じ方や好みは個人によって異なり、それはわたしたち自身の経験によって変化するといわれています。
年齢の異なる人を対象にした匂いの嗜好に関する研究では、2歳児はスカトール(排泄物の匂い)とβ-フェニルアルコール(バラの花様の匂い)に対する選好が成人とは異なり、どちらの匂いに対しても明らかな嗜好を示さないことが報告され、それは月齢の小さい幼児にとってスカトールが親近感のある匂いであることが考えられるとされています。5)
TVやSNSなど様々な場面で流れてくる音楽を気が付いたら口ずさんでいた、好きになっていたということを経験したことはありませんか。わたしたちは日常生活の中で様々な刺激に触れていますが、ある刺激に繰り返し触れるほど、それを好きになっていくことを学術的には「単純接触効果」といいます。匂いに関しても単純接触効果について研究がされています。この研究では睡眠中にジャスミンとローズの匂い呈示を4日間繰り返し行った結果、嗅覚の単純接触効果には刺激選択制があること、さらに嗜好が増大するもしくは維持することが報告されています。6)
その他、脳内では匂いの好き嫌いがどのように処理されているかという研究も行われています。この研究ではハエの匂いに対する行動、嗅覚情報を処理する脳の応答を組み合わせたモデルを作成し、匂いの嗜好は環境依存的に変化する脳内メカニズムになっていることが報告されています。7)